06


五時間目。英語の文法に四苦八苦してる私を存分に嘲笑った幽霊さん。

「ねみぃ」

そう一言呟くと、六時間目とホームルーム、掃除の時間は何処かへ消えていた。静かなところでゆっくり休んでいたのだろう。
果たして幽霊に睡眠欲というものがあるのかどうかは定かではないけれど、今朝も寝ていたからあるんだろう。変なの。

そして、やってきました放課後。
帰りに近所の寺に寄ってあの悪霊を除霊してもらおう。大丈夫だ、寺で悪さは出来ないはずだ。
もしかしたらあそこの寺にある墓地に幽霊さんのお墓があるかもしれないしね!上手いこと成仏してくれたなら、気がむいた時にでもお墓参りに行ってあげよう。

そんな事を考えながら荷物を纏めて教室を出た私。

「幽霊さーん……」

一応小さな声で呼びかけてはみたけれど、当然ながら忍者のようにシュッと現れるなんてことはなかった。

「……ちぇ」
「何が『ちぇ』だ」

かっ消すぞドカス。
ひっ……!

思わず叫び声を上げそうになった口を咄嗟に塞ぎ、恐る恐る振り返る。
物凄く怖い顔の幽霊様がそこにいらっしゃいました。

「……コ、ンニチハ」
「………」
「え、えーっと……か、かえります」
「……」

誰か助けてください。この沈黙、苦しいです。
無言で睨み付けてくる幽霊様が恐ろしくて堪りません。助けてください。

「あ、あのっ、今日はですね、その……お寺に行ってみようと思うのですが………」
「あ?」

テメェ何ふざけたこと言ってやがる、かっ消すぞ

そんな言葉が続いたように聞こえたのは気の所為でしょうか。

すみませんすみません、本当ごめんなさい

平謝りしながら何とか学校を後にして駅へと向いながら、私は一生懸命幽霊さんに説明した。
もしかしたらあの寺にお墓があるかもしれないこと。
もしかしたら住職さんが何とかしてくれるかもしれないこと。
けど、幽霊さんは鼻を鳴らして一蹴した。

「俺の墓があるわけねぇだろうが。俺は死んでねぇ」
「………地縛霊とかって、皆そう言うんですよ」

漫画とかでしか見たことありませんけど。
そう答えたら発砲された。恐ろしいにも程がある。

「そもそも、俺はイタリアにいた。ここに俺の墓があるはずがねぇ」
「それは……えっと………」
「墓があるとしたらイタリアだ。確認しに行くか?」
「………遠慮しときます」

イタリア?無理無理。
英語だって無理なのにイタリア語なんて更に無理だ。パスポート持ってないし。

「あの……じゃあ、えっと………何がどうなってこんなことに?」
「聞いてんのは俺だ。何しやがった――と言いてぇが」

もしかして幽霊さん、私の無実を信じてくれた……?

「テメェみたいなカスにどうにか出来るはずがねぇ」
「………うん、まぁ……分かって頂けて光栄です……」

幽霊さん、私、泣きたくなりました
うぜぇ黙れカス殺すぞ

「ぐすん。じゃあ……これからどうするんですか?」
「同じことを何度も言わせるんじゃねぇ。昨日の夜言っただろうが」
「へ?」

何て?
呆れたような――というか蔑むような視線を受けながら首を傾げて思い返す。昨日、幽霊さんは何と言っただろうか。

「………すみません、カスって沢山言われたことと何度も銃ぶっ放されたことは覚えてるんですけど」
「ハッ、やっぱカスだな、救いようがねぇ。”今日からここに住む”っつったろうが」
「……えーと、何処からつっこめばいいですか?」
「かっ消す」

じゃきんと真っ黒な銃を構えて幽霊さんが私を睨み付ける。

「じょ、冗談じゃないです! バカにしてもないです! ただっ、そのっ、む、無理があるかなーって……!!」
「知るか」
「だ、だって、寝る場所、ないし!」
「昨日と同じところで我慢してやる」
「私の寝る場所は!?」
「知るか」

とっとと帰りやがれ
チンタラ歩いてんじゃねぇよドカスが

実際にはすり抜けてるのですが、幽霊さんのその長いおみ足で蹴られながら家路へとつきました。





幽霊は我が家に居候するらしいです。





「次に居候っつったらかっ消す」
「ホントのことなのに!?」
「るせぇ」

口を貫通していく銃弾。

「あのですね、それ、冷たくて地味に痛いんです。出来れば銃を撃つという選択を無くして頂けると……」
「出来ねぇ相談だ」
「………そうですか」

”出来れば”じゃなくて”しないでください”って言えば良かったのか……
どう言ったところで無駄な話だな
ですよねー、あははっ!

自棄になって笑い飛ばしたらまた発砲された。もういや!