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「なぁ、ERROR! 俺、ERRORの作った飯食いてぇ!!」

満面の笑みを浮かべたエースの口から飛び出た言葉が与えた衝撃は、アタシの手からスプーンを落とさせるには十分だった。

「………何、だって?」
ERRORの作った飯が食いてぇ!」

太陽を思わせる笑顔で繰り返すエースから顔を逸らすと、アタシの向かいで我関せずといった様子でご飯を食べているリサと、隣に座るマルコさんがいた。

「…………リサのご飯、美味しいでしょ?」
「おう! でもERRORのも食いてぇ!」
「…………本気?」
「おう!!」
「何、ERRORちゃん料理出来ねぇの?」

アタシの態度を見てサッチさんが笑う。ギクリと身体が強ばった、のは多分気付かれたな、うん。チクショウ、笑うな。

「で、出来ない訳じゃないよ! ねぇ、リサ!?」
「うん」

にっこり笑って頷いてくれるリサにサッチさんが「ホントかぁ?」なんて笑いながら疑り深い目で見てくる。

ERRORは凄いんですよ? 可愛いだけじゃないんです」
「………ソーデスカ」

あぁっ!サッチさん!視線逸らさないで!「やれやれ、親バカかよ」って目をしないで!マルコさん!そんなリサも可愛いとか思ってんでしょこのヤロー!考えるトコ違うから!!エースは寝るなああぁぁっ!!

「じゃあ、昼飯はERRORちゃんに手伝ってもらうか!」
「え!?」
「何か問題あんのか?」

うわああん!サッチさんバカ!イジワル!!分かってるくせに!さっきのやり取りで分かってるくせに!!ニヤニヤすんな!こんな事なら、もっと料理の本読んだりリサに教わったりして勉強してれば良かった……っ!!

「悪ィが、ERRORには俺の手伝いしてもらう約束してんだよい」
「へ?」
「んぁ? 何だよマルコ、ノリ悪ィな」
「どっかの隊長二人のおかげで書類が溜まっててなぁ。まぁ、そいつらが自分達が手伝うってんなら――」
「さぁ、ERRORちゃん! マルコの手伝いして来い! 存分にして来い!」

サラッと掌を返したサッチさん。どっかの隊長はアンタか!いつの間にか起きたエースも目を逸らしながら口笛を吹いてる。嘘ヘタ!!エース嘘ヘタ!!

「飯終わったら部屋まで来てくれるかい?」
「あ、はい!」

マルコさんに感謝!!




ご飯が食べ終わってマルコさんの部屋に行ったけど、部屋に入ってすぐ回れ右をしたくなった。

「何、これ……」
「何が?」
「机の上に書類が積んである……こんな沢山……?」

薄っぺらい紙を何枚重ねたらこんな高く積み上げられるの?ってぐらいの量に思わず顔が引き攣った。けど、マルコさんは「いつもこれくらいだよい」って苦笑する。え、ホントに?

「海賊、だよね?」
「止めた覚えはねぇなぁ」

そう言って笑うマルコさん。いや……ホントに?何度も聞くけど、ホントに?

「ア、アタシは、何をすれば、イイノデショウカ」

アタシに手伝えるか甚だ疑問だ。だって、チラって見たけど何あれ!?ミミズ!?何て書いてあるの!?かろうじてサインの所にACEって書いてあるのが読めるだけだよ!?エース!?どんだけ下手クソなの!?やる気ゼロか!!

「あぁ、そこの本棚」
「へ?本棚?」

書類に目を通しながらマルコさんが親指で後ろの本棚を指した。積んである書類が崩れないようにそーっと移動して本棚に向かうと、何か小難しい本がいっぱい並んでマス。マルコさん、貴方ホントに海賊ですか?随分と勉強熱心なんデスネ。思わずカタコトになるわ。

「真ん中ら辺が料理の本だよい」
「え、」
「欲しかったんだろい?」
「ご、後光……!」
「は?」
「マルコさんの背後に後光が差して見える……!」
「大袈裟な奴だねい」

苦笑してるマルコさんが眩しく見える!

「うわあぁ……助かった……! サッチさんイジワルなんだもん!」
「そん時ゃ、リーゼント潰すなり蹴り飛ばすなりして構わねぇよい」
「アハハ! 次からはそうする!」
「悪ィが、ベッドしかねぇからそこ座ってくれよい」
「はーい! ありがと!」

助かった!意気揚々と本棚の真ん中らへんを陣取っている料理の本に手を伸ばして、そこでハタと気づいた。

「………マルコさん、」
「んー?」

聞いてるのか聞いてないのか分かんない声が返ってきた。ちょっと貴重だな、今の。そうじゃなくて。

「マルコさんも読むの? 料理の本を?」
「いや、全く」
「え? でも……」

この本達は?そう尋ねながらマルコさんの方を見れば、少しだけ照れ臭そうな顔でマルコさんが「あー……」って歯切れの悪い声を出した。

「そいつァ、リサのだよい」
「え、リサの?」
「あぁ。リサの部屋に本棚作るまで、ここに置かせてやってたんだ」
「ふぅん………」

あれ、でも待って?

「……本棚、作ったよね? この間……」
「…………」

船大工の皆に作ってもらってた。うん、アタシも作ってもらったし、何度もリサの部屋行ってるから知ってる。

「………へぇ〜、ふぅ〜ん」
「うっせーよい」

ニヤニヤしちゃうのはしょうがないよね?何て言ってこの本達をここに置き続ける事にしたのかは知らないけど、なぁんだ。マルコさんちゃんと自分でも頑張ってんじゃん。ここの本が必要になったらリサが部屋にやって来るもんね。話す口実にだってなるし。

「ふふふー」
「………食堂戻るかい?」
「この本持ってって良いんなら。サッチさんだったら喜んでくれそうだし、読み終わったらリサに返せば良い? きっと自分の部屋に持って帰るよねー」
「………チッ」

うわ、舌打ちしたよこの人!いきなり伸びてきた大きな手がアタシの頭をグシャグシャに撫でた。痛い痛い!!

「ったく……大人しく読んでろい」
「はーい」
「サッチに言ったら一週間一人で甲板掃除」
「言いません!」

あんな広い甲板を一人でなんて無理!照れ臭さが残る顔で仕事を再開するマルコさんに心の中で「ありがとう」って言って、アタシも本を開いた。

一息入れようと顔を上げたマルコさんが、ベッドで眠りこけるアタシを見付けて呆れるのは一時間後の事。