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「リサってさ、マルコさんの事どう思ってんの?」

夜が更けてすっかり静かになった食堂でのんびり一人酒をしていた所に突然やってきたERROR。その口から紡ぎ出された言葉に、私は「はい?」と聞き返してしまった。

「好き?」
「何、突然……」
「どうなのかなぁ、と思って」

向かいに座って私の手にあるグラスを奪って飲み始めるERROR。程々にしておきなよ、と言ってからERRORに言われた事を考えてみた。

「マルコさん、」
「そう、マルコさん」
「好きだよ?」
「ホント!?」
「だって、家族でしょう?」

途端に脱力するERROR。机に突っ伏したERRORの手からグラスを取り返して飲んだけど、殆ど入ってなかった。どうしよう、もう一杯だけ飲もうかなぁ。きっとERRORの話が長くなるだろうしなぁ……。うん、そうしよう。立ち上がって新しくお酒を注ぎに行く。ERRORの分もちょっとだけ注いであげようっと。二つのグラスを持ってERRORの所に戻ると「ありがと」とお礼を言ってERRORが笑う。あぁ、可愛いなぁ。

「それで、どうしたの?突然」
「んー?」
「どうしてマルコさん?」
「どうして、って……あー……じゃあ、サッチさんは?」
「好きだよ?」
「どっちが好き?」
「え?」
「マルコさんとサッチさん」

何を言い出すのかと思えば……。「どっちも好きだよ」って言えば「どっちか!」って返ってくる。

「そんな事聞いてどうするの」
「別にどうもしないけど……気になったから?」
「大体、そういう事聞くのは失礼だよ」
「聞かれたくなかった?」
「私じゃなくて、マルコさんとサッチさんに失礼でしょう? 優劣つけようとするなんて」

不満げに唇を尖らせるERRORの額を軽く突いてお酒の入ったグラスを口に運ぶと、またERRORが口を開いた。

「じゃあさ、じゃあさ! アタシの父親とマルコさんはどっちが好き!?」
「………ERRORちゃん、」

唇に付けた所で止めたグラスをテーブルに戻してERRORに手を伸ばす。私と同じ色の髪を優しく撫でて、そのまま頬へ滑らせて――ちょっと強めに抓む。

「い……っ、」
「いい加減にしないと、怒っちゃうわよ?」
「ご、ごべんばば……」
「うん? 聞こえないよ?」
「ごべんんばばい!!」

涙の滲み始めたERRORが叫ぶように謝り、手を放してあげると痛い痛いと赤くなった頬を押さえている。

「ダメだよ、興味本位で人の心覗こうとしちゃ」
「……そんなんじゃないもん」

頬を押さえながら唇を尖らせるERROR。少しだけ強く抓りすぎたかな。

「欲しいの?」
「え?」
「『お父さん』」

ERRORをじっと見つめると、キョトンと目を丸くしていたERRORは私の言った言葉を理解して慌てて首を振った。

「そうじゃなくて……!」
「そ。じゃあ、ナイショ」
「へ?」
「『お父さん』が欲しいって言うんなら教えてあげようかと思ったけど」
「え、ちょっ……」
「私、ERRORがいればそれで十分だよ。それに、今はみーんな家族だしね?」

マルコさんも、サッチさんも、みーんな。

「選ぶ必要、無いでしょ?」
「そんなのズルイ!」

お酒を飲み干して立ち上がり、流しへ向かう。ERRORが飲み終わったグラスも一緒に持っていって洗っている間も、ずっとERRORが何か叫んでいたけど聞こえないフリをした。

「さ、私は寝るよ。ERRORちゃんも早く寝なさいね?」
「リサ!! ズルイ! ちゃんと教えてよ!」
「おやすみ〜」

後ろで喚き続けるERRORに手を振って食堂を出て部屋へ向かう。

「困ったチャンなんだから」

ちゃんと気付いてるんだよ? 陰に隠れてる人達がいた事。