06


「一人?」

ポンと肩を叩かれて振り向くと、知らない男の人が二人、アタシににっこり笑いかけていた。

「………え?」
「スゲー可愛いね、一緒に遊ばない?」
「いや……結構です」

何この人達。アレか、ナンパってやつか。初めてされた……!けど、全然嬉しくない。

「そう言わずにさ」
「遊びに行こうよ」
「人、待ってるから」
「女の子?」
「じゃあ、その子も一緒に行こうよ」

いや、人の話聞けよ。

「お母さん、待ってるの」

後ろの店を指してにっこり笑ってやれば、目の前の二人が少しだけ苦い顔をする。そりゃ、ナンパした子が母親と一緒だなんて言われたら困るよねぇ。とっとと消えて。リサが戻って来たらややこしい事になるんだから。

ERROR、お待た、せ……?」

タイミング悪すぎ。買い物を終えて袋を提げて出て来たリサがアタシとアタシを囲むようにして立ってる男達を見て軽く首を傾げた。男達は物凄く顔を輝かせたけど。

「何だ、お母さんじゃないじゃん!」
「スッゲ可愛い! お姉さん?」
「だから、お母さんだっつってんでしょ」
「またまたぁ!」
「こーんな可愛いお母さんがいる訳ないじゃん。ね、お姉さんも一緒に遊び行こうよ」

マジ失礼。こいつら失礼。殴って良いかな、抉るように殴って良いかな。

「買い物の途中なのでごめんなさい」

にっこり微笑んでリサが断るけど、男達は聞いちゃいない。あー、うざい。ホントにうざい。アタシ達が住んでた島じゃこういうの無かったからなぁ……。

「リサ、行こ」

リサの手を取って強引に歩き出そうとしたけど、やっぱり止められた。腕放して欲しい。気持ち悪い、触んな。

「イイじゃんイイじゃん」
「行こうよ、ね?」
「買い物中だって言ってんでしょ?」
「ちょっとくらいイイだろ?」
「ねぇ、お姉さん? 行こうよ」

あー、苛々してきた!拳を握り締めてもういっそ殴ってしまおうかと考えてたその時。

「ごめんなさい。私、嫌いなんです。弱い人とか、無理してカッコ付けてる貴方達みたいな人が」

物凄くいい笑顔でとんでもなく毒吐いた。一瞬ポカンとしてた男達は、当然のごとく次の瞬間にはキレて何か喚き出した。調子乗んなとかブスとか。

「キャンキャン吠える人も好きじゃないです。同じように吠えるなら、わんちゃんの方が可愛げがあって良いですよね」

わんちゃんと比べたら失礼かしら、なんて首を傾げるから、とうとう男達はリサめがけて殴りかかろうとして――ぶっ飛ばされた。おぉ、飛んだ飛んだ。

「誰を殴ろうとしてんだよい、ぁあ?」
「困るねぇ、俺らの大事な家族に手ェ出しちゃ。で、誰がブスだって?」
「燃やされてぇのか?」

いつの間にか現れたマルコさん、サッチさん、エースが凶悪な笑みを浮かべてそこにいた。うん、いかにも海賊って感じだね。顔よりも雰囲気が怖すぎる。

「リサちゃんもERRORちゃんも怪我はねぇか?」
「うん」
「大丈夫、ありがとうございます」

サッチさんがアタシ達に優しく笑いかけてくれたから、アタシもリサも笑顔でお礼を言った。マルコさんとエースはぶっ飛ばされた男達のトコで何かしてる。怖い。その人達死にそうだから。もう意識無いから。

「それにしても……」
「はい?」

サッチさんの呟きにリサが首を傾げる。

「いやあ、見事に毒吐いたなぁと思って」
「聞いてらしたんですか?」
「あぁ、二人がナンパされてんの見つけて駆け付けようとしたらリサちゃんが毒吐き出すから思わず足止めちまったよ。ごめんな、遅くなって」
「大丈夫だよ、もう少し遅かったら自分で殴り飛ばしてたし」
ERROR! 怪我ねぇか!?」

エースが駆け寄ってきてアタシの肩を強く掴んで怪我の有無を調べてる。いや、肩が痛いです。エースに掴まれてる部分が痛いです。痣になりそうです。

「大丈夫かい?」
「はい、ありがとうございました」

大丈夫だって分かってるくせに尋ねるマルコさんにリサがにっこり笑う。うーん、この二人、どうなんだろう?たまーに良い雰囲気なんだけどなぁ……。

「それにしても、随分と辛口だったねい」
「あぁ、さっきのですか?」
「リサってたまに怖ェよなぁ」
「だって、さっきの人達ヒドイ事言うから」

不機嫌そうに眉を寄せるリサにエースが目を丸くする。

「もしかして、ブスって言われた事気にしてんのか?」
ERRORを悪く言う人は嫌いです」
「………あ、うん。そういう事」
「だと思ったよい」
「ハハッ! リサちゃん親バカだなぁ! まぁ、ERRORちゃんホントに可愛いから無理もねぇか!」
「ふふ、そうなんです。可愛すぎてどうしましょう。ね?」
「いや、アタシに「ね?」って言われても……」

恥ずかしいんですが。羞恥プレイですか。そういう趣味は全く無いんですが。

「ねぇ、ERROR。何か甘いものが食べたくない?」
「食べる!」
「俺も!」
「確か、あっちの通りにクレープ屋があったぜ」
「じゃあ、皆で行きませんか?」
「行くー!!」

エースと一緒にリサ達の先を歩きながら、何のクレープを食べようかななんて考えててふと気付いた。そう言えば、さっきの男の人達どうなったんだっけ?

「――ま、いっか」

リサを悪く言ったアイツらなんか、知ーらない! 結局、アタシも娘バカ。