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ERRORの親父ってどんな奴?」

お前!空気読め!!って叫びそうになる口を慌てて塞いで、爆弾発言を投下したハルタと、向かいに座ってキョトンと目を丸くしてるリサちゃんを見つめた。リサちゃんの持つスプーンに載ってるオムライスが皿の中に落ちた。ついでに、隣に座るERRORちゃんと逆隣に座るマルコのスプーンからも落ちた。

ERRORの父親、ですか?」
「うん、どんな奴なのかなって思って」

ニコニコと人の好さそうな笑みを浮かべてるハルタ。あ、そういやコイツ、さっき書類出し忘れてたってマルコのトコに持ってって拳骨食らってたか。仕返しにしてはちょっとタチが悪ィが、それがハルタ。少し離れた所に座ってたイゾウまでハルタの隣にやって来て「俺も気になるな」なんて言い出しやがった。その目がチラとマルコに向いたの見たぞ!お前ら!マルコ怒らせんなよ!俺だぞ!?とばっちり食らうの俺のリーゼントだぞ!!?

「どんな、と言われても……」

ほら!リサちゃん困ってるじゃん!!ERRORちゃんも動揺してんじゃん!エースは寝てやがる。どうしてそこで寝れるの!?お前馬鹿!!そのままケチャップで呼吸困難陥って苦しめ!!

「海賊だって聞いたけど本当?」
「あぁ……はい、そうですね」

え、答えちゃうの!?スルーして良いんだよ!?マルコ!固まってる場合じゃねぇって!耳塞げ!!その頭に乗ったバナナの皮で耳隠せ!!

「どうやって出会ったの?」
「危ない所を助けてもらいました」
「顔は? カッコイイ?」

ハルタ!マルコ見んな!!イゾウ!その笑い止めろ!!

「私はカッコイイと思います」

リサちゃん……っ!!そんな可愛く笑っちゃダメ!!マルコ震えてる!!マルコ震えてるから!!!

「え、お父さんカッコイイの?」

ERRORちゃん!?食いつくトコそこ!!?さっきまでの動揺何処行ったの!?

「だって、ERRORが可愛い顔してるでしょ?」

いやいやいやいや!!どう見たってリサちゃん似だから!!!父親の顔関係ねーから!!!

「そいつ、強いの?」
「強いと思います。あっという間に悪い人達倒しちゃいましたから」
「へぇ……じゃあ手配されてる奴かもね」
「名前は?」
「ヒミツです」
「え?」
「何で?」

ハルタとイゾウがガッカリしたような顔でリサちゃんを見る。他の奴らも何で?って顔でリサちゃんを見てる。勿論、俺も。俺らに知られたくないのか?

「名前知ってるの?」
「一応ね」
「何、一応って」
「後から知ったの。本人からは聞いてないから」
「は? 聞いてない?」
「うん」

ポカンと口を開けてるERRORちゃんと、頷くリサちゃん。え、どういう事?名前知らなかったの?

「え、だって付き合ってたんだろ? なのに名前聞かなかったの?」
「付き合ってないんです」
「は!?」
「助けてもらったその日に行ってしまったので」
「「「………はぁ!!?」」」

食堂中から上がる声に、リサちゃんは苦笑するだけ。

「ちょ……ちょっと、待って?」

思わず上げた声は上ずっていた。ンな事気にしてられるか。

「あの……えーと、何て言うか………その場限り、的な?」
「まぁ、簡単に言うとそんな感じです」
「名前も、聞いてないの?」
「聞いてません」
「そいつ、生きてるの?」
「生きてますよ。楽しく海賊やってると思います」
「因みに、その後連絡とかは……」
「ありませんよ?」

……………。

「えと、リサ……あの……アタシの父親、って……リサの事、」
「何とも思ってない、って言うか、どうでも良かったと思うよ? 助けておいて「礼を寄越せ」って自分で押し倒しちゃうような人だったし」
「「「…………」」」

ショックを受けてるERRORちゃんも気になるけど、ずっと俯いたままのマルコが怖い。おい、震えてんぞお前。

逃げろ……っ!!何処にいるか知らねぇが、ERRORちゃんの父親逃げろ!!!いや、でも俺もムカついてるからやっぱ逃げんな!!襲ったって何だよ!?ぶっ殺す!!!

「黙っててごめんね」

ERRORちゃんの頭を撫でるリサちゃんは少しだけ困ったように笑っていた。

「聞くとショックかなぁ、と思って」
「……アタシは別に……リサと二人でも寂しくなかったし、今だって楽しいし……」

ERRORちゃんの言いたい事は分かる。リサちゃんは?ヤる事やって男がとっとと海に出てって、腹にERRORちゃんがいるって気付いた時、どんな事思った?ERRORちゃんを育てながら、どんな事思った?沢山泣いたんじゃねぇのか?沢山苦しんだんじゃねぇのか?

「私ね、感謝してるの」
「感謝……?」
「だって、あの人のおかげでERRORに会えた。だから、今ここにいる。全部、あの人のおかげ」

………畜生、そんな事言われたら怒れねぇじゃん。そんな顔されたら、俺らは何も言えない。顔も名前も知らないそいつに感謝しなきゃいけなくなる。リサちゃんを襲ったクソ野郎に感謝なんかしたくねぇのに。
俺らだって、リサちゃんとERRORちゃんに会えて良かったって思ってるんだから。

「アタシ、リサが大好き」
「私も大好きだよ」

泣きそうな顔で笑うERRORちゃんの頭を優しく撫でるリサちゃんに、俺らは黙って飯を食う――なんて事はなくて、全員が酒を手に取って掲げた。

「「「俺らの家族に乾杯!!」」」

突然始まった宴会に驚いていたリサちゃんとERRORちゃんは、顔を見合わせて笑った。

「「乾杯!」」

これからは、俺らがいるから。リサちゃんにもERRORちゃんにも寂しい思いなんてさせねぇから。

だから、これからもよろしくな!!

取り敢えずマルコ、お前いい加減動け。固まったままなのお前だけだぞ。スプーン折れてんぞ! キレんなよ!
ここでキレんなよ!! 滅多な事考えてんじゃねぇぞ!!