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「あ、お昼寝してる」

昼食の片付けを終えて、夕食の仕度を始めるまでの僅かな休憩時間に甲板へ出てみたら、真っ先に目に入ったのは肩を寄せ合って眠ってるエース君とERRORの姿。今日は太陽が雲に隠れる事なく船を照らしていて、けど心地良い風が吹いてるからそこまで暑くない。お昼寝するには絶好の日和だと思いながら二人にそっと近付いてしゃがみ込んだ。
船縁に寄りかかって足を投げ出して座りながら、互いに肩を寄せて寝てるエース君とERRORは可愛らしくて、ここにカメラがあれば、って思うのは自然な事。

「ふふ、仲良しさん」

エース君のトレードマークにもなってるオレンジ色の帽子は今はERRORの頭に被せられていて、多分太陽から守る為なんだろうなって思ったらまた笑みが零れた。

「何してんだい?」

後ろからかけられた声に振り向いて「しー」と人差し指を唇に当てると、マルコさんは私の影になっていたエースとERRORを見て呆れたように笑った。

「平和ですねぇ」
「海賊船なんだがねい」
「ふふ、良いじゃないですか。平和が一番です」

マルコさんが私の隣にしゃがみ込んでエース君とERRORちゃんをまじまじと見つめる。

「仲良しさんですねぇ」
「良いのかい?」
「何がですか?」

首を傾げてマルコさんの方を向くと、マルコさんはエース君のクセのある髪の毛をクイクイ引っ張りながら笑っていた。眉を寄せたエース君はそれでも起きる気配が無い。

「こんな奴にERROR渡しちまって」
「あぁ……そうですねぇ………うーん、実は迷ってます」
「エースが海賊だからかい?」
「それはあんまり関係無いです。今は私達も海賊ですしね」

海賊かどうかなんて関係ない。ただ、一つだけ問題があるとしたら。

「じゃあ、何に迷ってんだい?」
「もしエース君とERRORが結婚したら、エース君が私の息子になるんですよねぇ……」
「………それは……確かに……迷う、よい」
「ですよねぇ」

くすくす笑うと隣でマルコさんも喉を鳴らした。

「それに、子どもが生まれたら、私おばあちゃんになっちゃいますし」
「随分と若ェばあちゃんだねい」
「年齢的にはそこまでじゃないんですけどねぇ……ちょっと若いくらいかな? この顔で孫がいるって言っても信じてもらえなさそうですよね。ただでさえ、ERRORが娘だって言っても信じてもらえないのに」
「けど、ERRORを見るリサの目は母親の目だよい」

その言葉に驚いて目を丸くすると、マルコさんは優しい顔で私に笑いかけてくれた。

「リサはERRORの母親だ」
「………ありがとう、ございます」

ずっと、心の奥底で燻っていた事があった。ERRORの母親だと言っても信じてもらえないのは、外見がどうこうじゃなくて、私が母親らしくないからじゃないか、って。若く見られるのは嫌いではないし、むしろちょっと嬉しい。けど、私は紛れも無くERRORの母親だから。ERRORを産んでからの十六年、本当に大変だった。沢山泣いたし、もう無理だって思った事だってある。それでも、ERRORと一緒に生きてきた。ERRORの母親として頑張ってきた。

「ありがとう、マルコさん」

そう言って欲しかったのかもしれない。認めてもらいたかったのかもしれない。鼻の奥が少しだけツンとするのを感じて少しだけ俯くと、大きな温かい手が私の頭を撫でてくれた。撫でる事に慣れてないのか、少しだけぎこちなさのあるその手は、温かくて、優しかった。

「………マルコさんみたいに、」
「うん?」
「マルコさんみたいに、優しい人になって欲しいです」

エース君も、いつか生まれてくるかもしれないERRORの子どもも。そう言えば、マルコさんは目を丸くしてから傍目にもハッキリ分かるくらい真っ赤になった顔を手で覆った。

「………よい」
「ふふ」

腕に顔を埋めながら小さな声で呟くマルコさんが可愛く見えて、私はまた小さく笑った。