リサちゃんとERRORちゃんが船に遊びに来た日から数えて今日は三日目。相変わらず、俺やエースは店に入り浸って酒を飲んだり飯を食ったりしながらERRORちゃんやリサちゃんと仲良く話したりしてる。運の良い事に、船番は俺には当たってない。エースは昨日見事に船番に当たって悔しがってたけどな。ざまぁみろ。
リサちゃんがマルコと町に降りた後も甲板でエースとじゃれ合ってたERRORちゃんはすっかり他のクルー達とも仲良くなって、他の隊長達まで店にやって来るようになった。何も無いつまんねぇ島だから降りないって言ってたのは何処のどいつ等だ。
今日は俺、エース、イゾウが店に来てる。昨日はビスタとハルタが一緒だったし、一昨日はラクヨウとジルが一緒だった。マルコは来てない。アイツ、リサちゃんに会いたくねぇのか?
「はい、お待ちどおさま!」
ERRORちゃんが運んできた飯にがっつくエース。そんなエースを呆れたように見ながら俺とイゾウは新しい酒をどんどん空けていく。
「それにしても、ホンットによく食べるよねぇ……何で太んないの? サッチさんもイゾウさんも、そんなに飲んだらフツーは水太りするんだよ? ビールッ腹にならないの? おかしいよ絶対!」
「おかしいって言われてもなぁ……」
あ、エースが寝た。
「ズルイ!!」
「ズルイって言われてもなぁ」
イゾウと顔を見合わせて笑う。
「毎日毎日、店中の食材もお酒も全部お腹に収めて帰るのに何で太らないの?」
「さぁ……身体動かしてるからじゃねぇか?」
「アタシだって動かしてるのに……っ!」
「お前さん、太ってねぇだろ」
「そんなに食べてないからね! そんだけ食べたり飲んだりしたらすぐに太るもん!」
「その分、動かしゃァ良い」
酒が入ってるからか、上機嫌なイゾウが笑う。
「お店で働いてるだけじゃ足りないのかなぁ……定休日くらいしかゆっくり休めないのに。あーあ、アタシもたまには「もう食べれない!」ってくらいリサのご飯食べたいなぁ……その後、いーっぱい運動して全部消化してやりたい」
「そんなの簡単だろ?」
いつの間にか起きて飯を食べ出していたエースが笑う。お前、また顔汚れてんぞ。ナポリタンの色になってんぞ。
「俺らと海賊やりゃァ良い!」
おーおー、そんな期待に満ちた目で見てやるなよ。ERRORちゃん困ってんぞ。
「だーかーらー……」
「リサが良いって言ったら良いんだろ?」
「そ。リサが嫌がるなら、ダメ」
全てはリサちゃん次第。当のリサちゃんは何を考えてるのか分かんねぇし……ったく、マルコの野郎、アイツどーすんだ?
「それに、マルコさんもリサの事誘ってないみたいだし。買い出し付き合ってくれるのにお店には来ないんだもんなぁ……」
「「「は?」」」
俺とエース、イゾウの声が重なる。今、何つった?
「マルコが何だって?」
「え?」
キョトンと目を丸くするERRORちゃん。その時、リサちゃんが料理の載ったお皿を運んできた。
「こーら、ERROR。さっきから呼んでるのに来ないんだから……お待たせしました」
出来上がったばっかの料理を俺らのテーブルに置くリサちゃん。
「なぁ、リサちゃん」
「はい?」
「もしかして、マルコと会ってんの?」
「? 買い出しは付き合ってくれてますけど……」
それが何か?って首を傾げるリサちゃんとERRORちゃんに、俺達は何も言えない。
「もしかして知らなかったの?」
俺ら三人が同時に頷く。知らねぇ。買出し?マルコが?
「毎日、エース達が食材もお酒も使い切るでしょ? 買い出しの量が増えて大変だから、ってマルコさんが手伝ってくれてるんだよ。アタシは朝弱くて起きれないから」
「え、じゃあマルコと会ってんの?」
「うん、うちのクルー達の所為で悪いって言って……大丈夫って言ってるんだけどね。お金は払ってもらってるのにそんな事させるのは逆に申し訳ないから……でも、どうせ全部皆のお腹に収まっちゃうんだから、荷物持ちくらいさせてくれって」
「へぇ、マルコがねぇ……」
ニヤリと口端を上げるイゾウ。遊び相手が見つかって良かったな、俺はやんねぇけど!俺は俺の生命とリーゼントが大切だ。
「店に来てねぇから会ってないんだと思ってた」
「昼間は仕事が残ってるから、って……あ、でも今日は夜、ご飯食べに来るって言ってましたよ」
「なーんだ、そっかそっか」
何もしてねぇんだと思ってたけど、ちゃんとやってんじゃねぇか。しかも朝二人でデートだぁ?リサちゃんが厨房に戻って行くと、ERRORちゃんがこっそり俺達に耳打ちした。
「マルコさんが買ったもの運んでくれるから、おっちゃん達とお酒飲む時間なくなっちゃったの」
「成程、そこまで計算づくか」
「マルコ怖ェ」
楽しげに喉を鳴らすイゾウと、若干顔を引き攣らせてるエース。俺はと言えば、マルコがそこまでリサちゃんに執着してる事が嬉しかったりする。オヤジ至上主義、家族第一で自らの危険を顧みずに敵に突っ込んでくアイツに大切なモンが出来るのは良い事だ。アイツは自分を蔑ろにしがちだからな。あの能力がそれに拍車をかけてやがる。もっと自分を大切にして欲しいって思うのが、長年兄弟をやってきた俺の素直な気持ちだ。
「でも、そんだけリサの事好きだって事だろ? 俺、リサがマルコを好きになってくれたらスゲー嬉しい」
俺は、お前の恋も実れば良いと思ってんぞ。ジンベエに『人斬りナイフ』って言われてた末弟が日に日に変わっていくのを見てんのは楽しいし、嬉しい。身内贔屓だって言われたって構わねぇ。マルコもエースも、勿論他の奴らも皆良い奴ばっかだ。幸せになって欲しいと思うし、してやりてぇとも思う。
リサちゃんとERRORちゃんが、マルコとエースの事を嫌ってない事は見てりゃ分かる。出来る事なら、もっと時間を与えて欲しい。リサちゃん達がマルコ達の良さを理解してくれるまで。俺の大切な家族達が見つけた『宝』を手に入れるまでの時間を。
「エースって、ホントに家族大好きだよね」
不意に聞こえたERRORちゃんの声。エースが「おう!」って満面の笑みで答えるモンだから、俺もイゾウも自然と笑顔になる。
「アタシ、エースのそういうトコ大好き」
ニッて笑ったERRORちゃんは、厨房からリサちゃんの声が聞こえてそっちにパタパタと走って行った。
「罪作りだねぇ」
「おい、エース。火が出てんぞ」
「うっせぇ!」
文字通り顔から火を出したエースがトレードマークのテンガロンハットを深く被って顔を隠す。そんな可愛らしい末弟に、俺とイゾウは声を上げて笑った。