答えはとうに出ていた。スネイプの心に迷いはない。
帰って来たら彼女に告げるのだ。
一緒にいたいのだと。
とても、大切に想っているのだと。
どうか、一緒に逃げて欲しい、と。
彼女の答えを疑ったことなどない。
何度その時を思い浮かべても、彼女の返事はたった一つしかない。
頬を染めて、嬉しいと笑ってくれる。
ずっと一緒だと手を差し伸べてくれる彼女を抱きしめて。
そして、誓いのキスをしよう。
永遠に共にいることを。
永遠に想い続けることを。
どんな困難も、二人で乗り越えていこうと。
そう、信じて疑わなかった。
「終わりにしよう」
彼女に、そう言われるまでは。
「な、に……言ってるんだ?」
笑えない冗談は止めろ。何の罰ゲームだ。
渇いた笑い声と共に伸ばした手は、彼女が身を避けたことで虚空を掴む。
「ルーシー?」
不安を滲ませながら見つめた彼女に、スネイプは息を呑んだ。
どうして。
「ごめん」
どうして。
「でも、もう一緒にいられない」
どうして。
「もうすぐ卒業だし、丁度良いよね」
どうして。
「今までありがとう」
楽しかったよ。
背を向けたルーシーが歩き出す。
声を発することも、動くことも出来ないスネイプを置いて。
待ってくれ。
呼び止める言葉は喉でつっかえて出てこない。
どうして。
説明を乞う言葉も、出てこない。
いやだ。
縋る言葉も、出てこない。
完全に姿が見えなくなると同時にスネイプの足から力が抜け、その場に崩れ落ちた。痛みはない。
何がどうなっているのか、理解出来ない。
そんなはずはない。だって、そんなはずはない。
だって、だって、だって。
好きだって言ったじゃないか。
あんなに、好きだって言ったじゃないか。
あんなに、あんなに、あんなに。
そんなはずはない。
これは夢だ。ただの夢だ。
頼むから、
早く覚めてくれ。
頭を抱え込んだスネイプのポケットで、綺麗に折りたたまれた羊皮紙がカサリと音を立てた。