33


「それで、お前は人狼のルーピンの為に何をしようとしているんだ?」

腕を組んで静かに問うスネイプの背後に真っ黒なオーラが見えるような気がするのは気の所為だろうか。
強要されてもいないのに地べたに正座をして小さく縮こまるルーシーは、亀のように首を引っ込めながら恐る恐るスネイプを見上げて無理に笑みを作ってみせる。

「え、と……な、内緒、なーんて……」

てへ。わざとらしく小首を傾げるルーシーを見下ろすスネイプの目は酷く冷たい。
先程からひたすらに睨まれ続けているルーシーの心は挫けそうだ。何が嬉しくて恋人にこんな冷たい目で見られなければならないのか。

いっそ言ってしまおうか?
けれど、そうすればこの恋人は確実に彼らの秘密をバラす。間違いない。
自分はまだアニメーガスとなってはいないが、ジェームズたちは既にアニメーガスになってしまっている。未登録である上に彼らはまだ学生だ。最悪、退学になるかもしれない。

「………ごめん、やっぱり言えない。シリウスがしたことは、本当にごめんなさい」

深く頭を下げると同時に降ってくる大きな溜息に、びくりと身体が揺れる。
嫌われてしまっただろうか?小刻みに震える手をグッと握り締めたその時、温かい何かが頭に触れた。

「別に正直に話すなんて思ってない」

続いて降ってきた呆れた声に顔を上げれば、声色と同じように呆れ顔のスネイプがルーシーを見つめながらしゃがみこんだ。

「大体、何でブラックのしたことにお前が怒るんだ」
「それは……だって、シリウス謝らないって言ってたし……」
「だからってお前が謝る必要なんかない」

ぐに。伸びてきた手がルーシーの両頬を容赦なく抓る。痛みに悲鳴を上げるルーシーに鼻を鳴らしたスネイプは、隣に腰を下ろして壁に背を預けた。

「う、ぎぃ……いだい」

多少の加減はしてくれているものの、痛い。
けれど、その痛みはスネイプがここにいるという確かな証だ。

「セヴィ」

呼びかければ、ちらりとこちらをみたスネイプと目が合う。
何だ?と視線で問うスネイプに、自然と笑みが浮かんだ。

「良かった、無事で」
「………そう簡単にやられて堪るか」
「護ってくれてありがと」

ひたすらに逃げるべきだった。
結果としてスネイプの呪文が効いたから助かったが、もし外れていたらスネイプは間違いなく噛まれていた。人狼になっていたかもしれないし、最悪、殺されていたかもしれない。
それでもスネイプが戦うことを選んだのは、制止を振り切ってスネイプの元へ駆けつけようとしたルーシーを護る為だったのだと知っている。
自分の所為で危険な目に遭ったことは申し訳なくて、今でも思い出すと恐怖に身体が震える。

けれど。

「嬉しかった」
「………約束したからな」

照れているのだろう、こちらを見ないままに返ってくる返事はこんなにも幸せを感じさせてくれる。

「素敵なダーリンで嬉しい」
「バカか」

素っ気ない言葉を口にしつつも手を握ってくれるスネイプに、ルーシーは顔を綻ばせた。