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突然送られてきたルーシーからの別れを告げる手紙に「ふざけるな」と返して、その翌日に届いたのは「ごめんやっぱアレなし!」という、何ともふざけた手紙だった。

散々人を悩ませておいて……!!

いっそ吠えメールでも送ってやろうかと思ったスネイプだが、返信する前に再び送られてきた手紙に「会いたい」と、スネイプの怒りを根こそぎ削ぎ落としてしまうような文字があったので止めておいた。

翌週に再会した恋人から事の顛末を知らされたスネイプは、ただただ溜息を零すしかない。
素敵な嫌がらせをしてくださった親友にも文句を言ってやりたいが、きっとルーシーが言われたのと同じような答えしか返ってくることはないだろう。

「もういい」

結局、スネイプはそうやって怒りを押し殺して力なく笑うことしか出来なかった。
その代わりに今回沢山悩ませてくれた恋人に色々と意地悪をしてしまったのだが、それもまぁ仕方のないことだと受け止めてもらった。夏休み前、他の男に触れられるというふざけたこともあった所為か、少々度が過ぎてしまった感も否めない。だが、不意を突かれたとはいえ、シリウスに唇を奪われたことは事実だ。スネイプが抱く怒りも仕方のないことだと受け入れてもらう他ない。真っ赤な顔で恨み言を連ねるルーシーの文句は、全て聞き流させて頂いた。

残りの夏休みもあっという間に終わり、迎えた新学期。
噂になっているのだから、と堂々とルーシーと並んで駅構内を歩き、同じコンパートメントにも座ってやった。勿論そこにはレイもリリーもいるのだが構うまい。別にいちゃつくわけでもなく、ただ普通に話をするだけだ。
グリフィンドールとスリザリンの関係を考えればおかしな組み合わせだが、ルーシーとレイは双子で、スネイプとリリーは幼馴染み。何ら不思議なことなどない。むしろ、今までが不思議だったのだ。

あれほど頑なだったレイにも変化があった。
相変わらずルーシーを邪険に扱うものの、話しかけられれば普通に受け答えをするし、列車内だというのに自分から話しかけることだってある。それを喜ぶルーシーの顔が、自分が話しかけた時より嬉しそうに見えるのは、面白くないのだけれど。

「仕方ないわ。だって、セブルスはルーシーが好きなんだもの」

再会するなり「好きよ」と言われた時は驚いたが、ここまで明けっぴろげだと逆に安心する。
スネイプに嫌われたくないからルーシーへの態度が柔らかくなったということは、ルーシーからすれば複雑極まりないのだろうけれど。

「セブったらモテモテね」
「リリー、茶化さないでくれ」

くすくす笑うリリーに溜息を零したスネイプは、隣に座るレイと、逆隣でレイに張り合う恋人を交互に見てまた溜息を零した。

「ずるい! だって学校始まったらレイはずっとセヴィにべったり出来るじゃん!」
「同じ寮に入らなかったルーシーが悪いんでしょ」
「私の所為じゃないもん!」
「私の所為でもないわ」

つんとそっぽを向くレイに頬を膨らませて、ルーシーがスネイプを睨み付ける。

「浮気しちゃ駄目!」
「分かってるって……」
「あら、自分だってブラックとベタベタしてるじゃない」
「してない! ただの友達!」
「分からないわよ、だって好きだって言われたんでしょう?」
「い、言われてはないもん!」
「キスしたくせに」
「勝手にしてきたんだよ!!」

今にも泣きそうな顔で叫ぶルーシーを宥めつつ、つんとそっぽを向くレイを窘める。
正直な話、シリウスの話題はスネイプにとってもタブーだから止めて欲しいのだが、どうやらルーシーを揶揄って遊んでいるらしいレイはやたら楽しげで、無下にすることも憚られる。

「………あまり揶揄わないでくれ」
「現実を教えてあげただけよ」

ホグワーツに着けば、シリウスがいる。
ルーシーにその気がなくたって、あれだけ女遊びをしてきたシリウスが相手ではどうなるかも分からない。
レイの言う『現実を教えた』は、もしかしたらルーシーではなくスネイプに向けたものなのかもしれない。
無意識に顔を顰めたスネイプは、じとりと自身の恋人を見据えた。

「な、なに」
「………別に」

わざわざ言うことでもないだろう。嫉妬なんて見苦しいだけだ。
ルーシーの気持ちが自分にあることは疑う余地のないことで、たとえシリウスが出しゃばってきたからといって簡単に流されてしまうはずもない。
分かっている。分かっているのだけれど。

「ルーシーって無防備なのよね」

まるでスネイプの心を読んだかのようにリリーが溜息と共に零す。
そんなことない!叫ぶルーシーの言葉など、どうして信じられようか。

「自覚がないって罪よ、ルーシー」

的確な言葉でばっさり切り捨てたレイに、つい拍手を贈りたくなってしまったスネイプであった。