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知らなかった。
レイがスネイプを想っていたなんて、知らなかった。

誰に咎められることなくスネイプと一緒にいられるレイが羨ましいと思っていた。
同時に、いつもレイと一緒にいられるスネイプが羨ましいとも思っていた。

二人はルーシーにとって大切な存在だ。
大切な妹で、大切な恋人で。二人も大切に想ってくれていると知っていた。
だからだろうか、二人が常に一緒にいることに疑問を持つことも不満を抱くこともなかった。

レイがスネイプを想っていたなんて、考えたこともなかったのだ。

「ルーシー……」

O.W.Lの最後の試験は最悪だっただろう。
何せ、試験が終わった直後だというのに問題を一つも思い出せない。
試験が始まるギリギリで席に着いて、気が付いたら試験が終わっていたのだ。
下手したら空白のままかもしれない。折角リリーと勉強したのに。

「ルーシー、談話室に戻る?」

それともセブを探す?
リリーの問いかけに、ルーシーはびくりと身体を揺らした。
ぼんやりと顔を上げれば、リリーの後ろに見える扉をレイが出て行ったのが見えた。

「………ううん」

談話室に戻る。それ以外の選択を取れるはずもなかった。
スネイプとシリウスがどうなったのか心配だが、二人に会うのが怖い。
気を紛らわせようとしてくれているのだろう、談話室に戻るまでリリーがずっと話しかけてくれたけれど、ルーシーはその殆どを聞き流してしまった。
部屋に戻るなりベッドに潜り込めば、必死に何か声をかけようとしてくれていたらしいリリーは、けれど何も言わずに部屋を出ていった。

「……考えれば、分かったことじゃないか」

何もかもが正反対な双子だけれど、それでも何処か共通点があっておかしくないのだ。
人見知りをするレイが、入学当初から一緒にいたスネイプ。

人見知りの激しい妹がすぐに友達を作ったことが嬉しかった。
レイが仲良くなった子なら、いい子に決まっている。だから自分も仲良くなりたかった。

レイなのだ。ルーシーがスネイプに気を惹かれた理由は。
大切な妹と似ていた相手だからこそ。
大切な妹が仲良くなった相手だからこそ、ルーシーはセブルス・スネイプという人間に興味を持ったのだ。
レイがいなかったら、スネイプに興味を持たなかったかもしれない。

少し考えれば分かったことだ。
レイはスネイプが自分と似ているから、仲良くしているのだと思っていた。
レイがスネイプを大切な友達だと思ってるから、一緒にいるのだと思っていた。

好きだから一緒にいる。
とてもシンプルな理由だ。
誰もが簡単に辿り着く答えだ。

気付かなかった自分は、最低だ。
気付こうとしなかった自分は、最低だ。

”嫌い、大ッ嫌い……!!”

玄関ホールで泣いていたレイが甦る。

いつだってスネイプの傍にいたレイ。
いつだってスネイプの味方だったレイ。

二人はずっと一緒にいるはずだった――ルーシーがスネイプに興味を持たなければ。
間に割り込んだのは、ルーシーの方だ。

好きになってしまった。
好きだと言われてしまった。
レイの気持ちなんて考えもせずに受け入れて、幸せになって。
敵寮同士で付き合うなんて、と怒ると思っていた。
だから内緒にしていた。隠し通していた。

もし、最初からちゃんと話していたら――?

答えなど、出るはずもない。