薄暗い倉庫の片隅に息を潜めて膝を抱える。
賑やかなこの船も、最下層までくれば静かになる。この倉庫は必要ないけど捨てられないもの――つまりガラクタばっかりが押し込まれてる場所だから、ここに来る人なんていない。私くらいのものだ。

「………さむ……」

陽の当たらないここはいつだって薄暗くて肌寒い。夏島海域だからタンクトップに短パンなんて肌を露出しまくってる私は数時間前の自分を思い出して泣きそうになった。

別に閉じ込められたわけじゃない。怒られて逃げてるわけでもない。ただ、何となくここに篭りたかった。だってここは静かで、私一人しかいなくて、きっと冷静に考えられると思ったから。
けど、寒い。誤算だった。
諦めて上に戻ろうか。そう考えてすぐに首を振る。駄目だ。戻らない。そう決めたじゃないか。弱気になりつつある自分を奮い立たせて膝を抱える手に力を篭めた。

コツ、コツ。

何処かから規則的な物音が聞こえて肩を揺らした。あぁ、やだな。何で。物音は倉庫の外からで、これは間違いなく足音だ。足音は私がいる倉庫の扉の前で消えて、それからゆっくりと扉が開いていく。

「――あぁ、やっぱりここだったかい」

呆れたような口調なのに声音はとっても優しい。鼻の奥がツンとするのを感じながら膝に顔を埋めれば、またコツコツと足音が近付いてきて私の前で止まった。衣ずれのような音が聞こえたかと思うと、ふわりと肩に温い何かが掛かる。

「すっかり冷えてんじゃねぇか。風邪引く前に上に戻るぞい」
「………うん」

あっさり降伏し、差し伸べられた手を取って顔を上げれば、上半身を露出したマルコの優しい笑顔。肩に掛けられたマルコのシャツは凄く温かくて、泣きたくなった。
マルコに支えられて倉庫を出て、薄暗い廊下をひた歩く。

「ったく……勝手にいなくなるんじゃねぇよい。船が広いから探すのも一苦労だ」
「………探さなくたっていいもん」

可愛くないことを口にすれば、大きくてゴツゴツしてて温かい手がくしゃくしゃと優しく頭を撫でる。チラリと視線をを上げれば、とんでもなく優しいマルコの顔が私を見下ろしていた。

「探すに決まってんだろい」
「………、」

唇を噛み締めて必死に泣くのを耐える私に、マルコは「よしよし」なんて言いながらまた頭を撫でてくれる。
隠れる理由も泣きそうな理由も聞こうとしないマルコは、本当にいいお兄ちゃんだと思う。

「………ありがと」
「次は始めっから俺のとこに来いよい」

その方が手っ取り早い。そう言って笑ったマルコにじわりと涙が滲んだ。





あなたから離れたかったんです





そんなこと口が裂けても言えない私は、俯いて「考えとく」と呟くことしか出来なかった。