「終わったな」
生徒たちが連れて行かれるのを眺めながら、エースがしみじみと呟いた。
泣きじゃくる女子生徒。
抵抗する男子生徒。
悪くない。
俺は悪くない。
私は悪くない。
助けて、お願い助けて!!
手のひらを返したかのようにリサに縋りつこうとする生徒たち。
厚顔無恥ってのはこいつらの事だな。
呆れ顔で吐き捨てるマルコは、けれどしっかりとリサを背後に隠している。
「あの……マルコ、」
「ん?」
顔だけ振り返ったマルコと目が合う。リサは眉を下げて尋ねた。
「その………いつから知ってたの?」
イジメのこと。
そう続けたリサは、次の瞬間、尋ねてしまったことを後悔した。
「逆に聞くが、何で言わなかった?」
眉間に皺をたっぷり寄せたマルコから、尋常でないほどの不機嫌オーラが溢れ出している。
慌てて一歩退こうとしたリサだったが、いつの間にか腕をマルコに捕まれて動けない。
「あ、あの、それは……」
「それは?」
「う……だ、だって……その………心配、すると思って」
「あぁ、おかげさまで存分にさせてもらったよい」
刺々しい嫌味に、ぐぅの音も出ない。
心配させたくなかった。
迷惑かけたくなかった。
けど、本当はもっと別の理由がある。
それをマルコも見抜いていて、だからこそ怒っているのだろう。
分かっている。分かってはいるのだ。
最初から素直に相談していれば良かった。そうすれば、ここまで大事にはならなかったかもしれない。
「……ごめん、なさい」
謝罪の言葉しか告げないリサに、しかしマルコの返事はない。
息苦しい沈黙が続く。
その間にも、生徒たちは泣きながら教室を後にする。
彼らは確かに加害者であり、同時に被害者でもある。
考えることを怠り、一方の意見だけを鵜呑みにした結果がこれなのだから、自業自得と言えばそうなのだろう。
けれど。
もし、最初からマルコに相談していたとしたら?
結果は違っていたのかもしれない。
そういう意味では被害者なのだろう。
マルコからしてみれば到底くだらない理由で、リサは隠し続けていたのだから。
「ん? そういや、何でお前そのオッサンに内緒にしてたんだ?」
「………!!」
首を傾げるルフィに、リサは今度こそ完全に硬直した。
「ったく、お前って奴は……」
「バカ……」
「今に始まったことじゃねぇだろ」
サンジ、ナミ、ゾロが呆れたように零し、苦笑と共に肩を竦める。
「何だよ、お前ら知ってんのか?」
「知らないのはアンタだけよ」
「何ィーー!? んだよそれ! ズリィぞ!!」
喚くルフィの声を聞きながら俯いていたリサの頬に大きな手が触れる。
「で? 黙ってた理由は?」
顔を上げた先ではマルコがニヤリと笑っている。
「っ、い、言わないっ!」
言えるわけがない。
そんなリサの気持ちすら分かっていて聞くのだから、今回のことは相当業腹だったのだろう。
頬を染めてそっぽを向くリサを見て溜飲を下げたマルコは、今度は拗ねてしまった可愛い妹のご機嫌取りに勤しむのだった。