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「おい! ヤベェって! 学校に警察が来てる!!」

四月にこの学校に入学したばかりの男子生徒は、己のクラスに慌てて飛び込んだ。

マジかよ!?
え、何処に!?
何で!?
バッカ! ほら、あの二年の……
え、あの二年の女捕まったの!?

瞬時にざわめき立つクラスメイトに、男子生徒は興奮を露に自分が見聞きしたものを語る。
グランド高校の有名人が乗り込んできたこと。
彼らが桜井リサの友人だったこと。
彼女の保護者と、グランド高校の教師もやって来たこと。
被害者であるはずの相川という男子生徒が、嘘をついていたということ。
そして、警察が介入したこと。

予想だにしていなかったそれに、クラスメイトたちは言葉を失くして男子生徒を見つめた。

「え……嘘、だったの?」
「マジで?」

野次馬根性丸出しで上級生のクラスを覗きに行っていた男子生徒に、クラスメイトたちは何度も何度も聞き返す。
それは本当のことなのか。聞き間違いではないのか。

だって、それが本当なのだとしたら――

「だって………え、警察、って……?」
「何かよ、その桜井だっけ? その先輩の保護者が警察に被害届出したんだと」
「ひ、がい、とどけ………」

それは、つまり。
それはつまり、つまり、つまり――。

「………お、お前、たしかあの先輩のこと追いかけてたよな?」
「お、お前こそ! 散々悪口言ってたじゃねぇか!」
「私は言ってただけだもん! 手を出したわけじゃないし……!」

罪の擦り合いのようなそれに、男子生徒は顔を顰めた。
そもそも、フラれた腹いせに殴ったから寄って集ってリンチをするなんて馬鹿げてる。
イジメが始まった当初からそう考えていた男子生徒は、遠巻きにそれを見ていただけで自らが何かをしたわけではない。
見て見ぬフリ。それは立派に加害者だろうとマルコたちは怒鳴りつけたいだろうが、事実上、何もしていない人間を罪に問うことなど出来やしないだろう。
警官であるクザンとて、心情的にはマルコたちに近しいものがあるだろうが、それとこれとは別だ。

「け、けど! 俺ら、騙されてただけだし……っ!」
「そ、そうよ! 私たちだって被害者だもん!」

自分たちは悪くない。
弁明する相手がいないにも拘らず、必死にそう言い募る彼らに男子生徒は口を噤んだ。
言っても仕方ないと悟ったからだ。
どうせ、警察は全てを調べてここで被害者然している彼らのことも連れて行くのだろう。

「………この学校、どーなんだろ」

噂が事実ならば、彼女に嫌がらせをしていたのは生徒たちだけではない。
学校の過半数ほどの生徒に加え、数名の教師までもがそれに加担していたのだ。
恐らくあの保護者のことだから、教育委員会とかそこら辺にも連絡するのだろう。あの男は何でもやりそうだ。

「………良かった、俺、何もしなくて……」

厳しい目を向けられることは間違いないだろうが、罪に問われることはない――はずだ。

ホッと胸を撫で下ろした男子生徒は、この事態を収拾する為に担任がやって来るまでひたすらに口を噤み続けるのだった。