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「つーワケだ。おい、変態教師。そこのクソ教師引きずって事務室でも職員室でも行って来い。手続きは任せたぞい」
「おいおい、投げやりかよ――つーか変態教師って何だ! 俺は確かに碌でもない教師だが、変態になった覚えはない!!」

つーか、お前にだけは言われたくない!
胸を張ったシャンクスに、マルコ、ナミ、サンジ、ゾロが冷たい視線を向ける。

「碌でもない教師だってことは認めんのか」
「俺は自分という人間をよく理解っている。大丈夫だ、問題ない」

エースの問いに更に胸を張って答えるシャンクスに、

「アレが私たちの担任……頭痛いわ」
「まぁ、校長からしてあんなんだからな」

ナミとサンジが溜息を零して。

「にっしっし! 俺はシャンクスが担任で毎日楽しいぞ!!」
「口煩い奴よりマシだ。ここのクソ教師よりもな」

ルフィとゾロが笑い、エースは苦笑しながらリサを振り返った。

「何か、あっちはあっちで大変そうだぞ。大丈夫か?」
「楽しそう」

頷いて顔を綻ばせるリサの頭をマルコがぐしゃぐしゃと撫でて。

「おら、とっとと行って来いよい」
「ま、待ってくれ! 突然転校なんて言われても……っ、」
「テメェらに止める権利なんざねぇだろうが。コイツの保護者である俺が転校だっつってんだ」

それに。言葉を切ったマルコが口端を吊り上げたその時。


「っ、ざけんな……っ!!!」


全ての元凶とも言えるべき存在が、声を荒らげた。





「ふざけてんのはテメェだ、クソガキ」

突然声を荒らげた相川に、誰よりも早く返したのは言わずもがな。マルコだ。

「漸く出て来たかと思えば――」
「、るせぇ……っ!! テメェが、テメェなんかが……っ!!!」
「け、んじ……?」
「あいかわ、くん……」

呆然とする生徒たちの声は彼の耳には届かない。
どうして。
どうしてそんな目で見られなければならない。
どうして。
どうして俺じゃなくてその男に寄り添っている?

俺の前でだけ、変えていれば良いのに。
彼女の無表情が崩れるのは、全部俺のことだけであって欲しいのに。

「来いよ」

手を差し伸べれば、リサが僅かに眉を寄せた。

そんな反応を望んではいない。
違う。違う違う違う!!

「来いっつってんだろ!!!」

傍にある机を蹴り飛ばせば、周りの机や椅子を巻き込んで大きな音を立てる。
その音にすら、苛々する。

「お、おい……相川――」
「るせぇっ!!」

煩わしい。

健二、どうしたんだよ……!?

仲間であるはずの男の声も。

相川君……?

クラスメイトであるはずの女の声も。

どうしちゃったの……!?

何もかも。

煩い。煩い。煩い。煩い。
煩い煩い煩い煩い煩い煩い

煩い――!!!

「どうして」

「どうしてだよ」


「俺が、気付いたのに」



「ずっと見てたのに」




「誰よりも、俺が――!!」




彼は気付かない。
周りの生徒たちが息を呑んだことも。
騙されていたのだと気付いてしまったことも。
自分が全ての元凶であると報せてしまったことも。

彼の目には、ただ一人しか映っていないのだから。

「来いよ。俺が、この俺が、こんなに見てるんだ」

なら、お前も見なきゃおかしいだろ?

「何コイツ……頭おかしいんじゃないの!?」

気持ち悪ッ! ナミが叫びルフィの背後に隠れた。

「ったく……とんだ野郎に好かれちまったな、リサちゃんも」
「全くだ。まだうざってぇラブコックの方がマシだ、同情するぜ」
「んだとコラ、テメェ、この俺をあんな気狂い野郎と一緒にするんじゃねぇよ!」
「似たようなモンだろ」
「んだとクラァ!!」

突如始まったゾロとサンジの口論すら、彼の目には映らない。彼の耳には届かない。
ただ一人、ひたすらに見つめた先にいる彼女は、彼と目を合わせようとはしない。

それが、腹立たしい。

「こっち見ろっつってんだろ!!!」
「オイ、お前! なーにワケ分かんねぇこと言ってんだ?」
「、ぜぇ!! 触んじゃねぇ!!」

彼の肩に手を置いたルフィの側頭部に、彼の回し蹴りが叩き込まれた。
勢いよく机に突っ込んだルフィに、あちこちから悲鳴が上がる。

どうしちゃったの……!?
何でこんな……!
どうする!?
どうする、って……
んなの知るかよ!!

あちこちで飛び交う雑音に混じって、彼の耳に届く。

「ルフィ!」

焦ったような声。
抑揚のない声ばかりだった彼女の、感情の混ざった声。

それなのに、その声が呼ぶ名前が。

俺じゃ、ない。

「へぇ」
「随分と綺麗に決まったな」
「そんなこと言ってる場合じゃ……っ、ルフィ!」

暢気に言葉を交わすマルコとエースを押し退けたリサがルフィの元へ駆け寄ろうとして、


「どうだって良いだろ、他の奴なんか」
「、」


許せない。他の奴に気を許すなんて。
赦せない。この俺を見ないなんて。

ゆるせない。


「おい、汚ぇ手で、そいつに触んじゃねぇよい」


彼女まであと僅かだった手がピタリと止まる。
彼女の声だけで良いのに。
彼女の姿だけで良いのに。

邪魔な、存在が。

何よりも邪魔な、アイツが。



「それは俺のモンだ」