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よくもまぁ、ここまで盲目的に信じられたものだ。ゾロは思う。

こんなにも敵意に満ちた教室内で、彼女は堪えてきたのだ。
飛んでくる罵詈雑言に心を折られず、与えられる理不尽な暴力に屈することなく。
半月もの間、独りで戦ってきたのだ。

「誇っていいわよ、リサ」
「?」
「私の友達が、アンタで良かった」

そちらを見ないままにナミが告げた言葉。
それはとても温かくて、優しくて。
そしてそれは、紛れもなく自分たちが思っていることと相違ない。



「――私も」



小さな声が言を紡ぐ。



”みんながいてくれて、良かった”



細められた目に、
綻んだ口元に、
その声音に、

ルフィも、ナミも、サンジも、ゾロも同じように笑みを返して。

一瞬。ほんの一瞬。
教室に沈黙が落ちた。

「、によ……そうやって愛想振り撒いて仲間にしたわけ?」

クラスメイトの悔し紛れの言葉に、再び教室がざわめき立つ。
いつの間にか廊下には他のクラスの生徒たちが溢れていた。

「お前ら! 他校生が何をやっている!! 桜井! お前が呼んだのか!!?」

何てことをしてくれたんだ!
生徒たちを押しやって教室に入ってきた教師がリサに詰め寄った。
それを皮切りに、教室内だけでなく廊下からも怒声が上がる。

そうだそうだ!
調子に乗ってんじゃねぇよ! ブスのくせに!!
お前マジもう学校来んじゃねぇよ!!
出てけよ!
消えろ!!

口汚く罵る言葉にすら、リサは表情を変えない。
ついさっき、自分たちに向けられたその表情を、彼らには決して向けることはない。

初めてリサを見た時、線引きがしっかりした女だと思った。
心を許した者にだけ、表情を緩める。
頬を緩ませ、口元を綻ばせ、目を細めて、惜しげもなく笑みを見せる。
反対に、心を許さない人間には決して笑みを向けることはない。

誰に何と言われようと、彼女はそれを変えなかった。

酷い奴だと罵られるだろうか。
その事実に気が付き、尚且つ彼女からその笑みを向けてもらえた時。

嬉しいと、そう思ったのだ。

このままでいて欲しい、とも。

優越感に心満たされ、彼女に向ける笑みも幾分か柔らかいものになる。それを指摘したのは誰だっただろうか。
ナミだったか、サンジだったか、ルフィだったか。もう覚えていない。

彼女の分かりやすい表現方法に眉を顰める輩も少なからずいる。
震えるほどに拳を握りしめ、歯を食い縛った相川というこの男は、まさしくそれなのだろう。
けれど、だからどうした。
リサは大切な友人で、大切な仲間で。
それは自分だけでなく、ルフィやナミ、サンジにとっても同じことで。

大切な仲間を傷付ける人間を、どうして赦せようか。

憤怒というよりも怨恨に近いそれを露にこちらを睨み付けてくる男向けて口を開こうとしたその時。

「おい、お前ら!!」

一歩前に進み出たルフィが声を張り上げた。

「リサをイジメるのは止めろ!!!」

腕を組み、仁王立ちをして声を張るルフィ。
何処までも真っ直ぐで、何処までも簡潔なその言葉に誰もが黙り込み――我に返って声を荒げた。

「ふざけんな! そいつが悪ィんだろうが!!」
「そ、そうよ!! その子が悪いんだわ!!」
「騙されてるのよ!!」
「――だとよ、グルグル眉毛。どうだ?」

黙ったままのサンジに問いかければ、サンジは鼻を鳴らした。

「勘違い甚だしいぜ、全く。リサちゃんがそんな三下に告白するわけねぇだろうが」
「な……っ」

声を漏らしたのは誰だっただろうか。

三下。
この学校の人気者を。
自分たちの中心的存在を。
教師も、生徒も好意を寄せる、その存在を。

それは、まるで。

「まぁ、この程度の学校の奴らにはお似合いだな」

『この程度』

まるで煽るようなゾロの言葉に、けれどナミは注意することなく、むしろ助長するかのように頷いた。

「そうね、勝手にやってくれて構わないわ。けど、それにリサを巻き込まないでくれる? 迷惑よ!」

迷惑。

何故そんなことを言われなければならない?
悪いのはアイツなのに。
何故そんな目を向けられなければならない?
何もかも、アイツが悪いのに。

真実を見出せない彼らは、憤る。
他校の人気者を手中に収め、こうして自分たちに嗾けてきた存在を。

桜井リサという存在を。

徹底的に否定するのだ。
それが自分たちの首を絞める結果に繋がる事にすら、気付くことなく。