あぁ、何で彼らに知られてしまったんだろうか。
遠い目をしながらリサはエースの家を出てから学校まで全力疾走しなかった自分を悔やんだ。
悔やんだところで、何も変わりはしないのだけれど。
「うおおおぉぉぉ!! 出てこいリサを嵌めた奴ーーー!!!」
「クソ野郎!! 三枚におろしてやる!! とっとと出てきやがれ!!」
「ちょっとリサ!! 何処のどいつよ!? その何とかって勘違い男!!」
校門まで送る。そういう話じゃなかったっけ?
隣に立つゾロに問えば、分かりきったことだったろ。簡潔な答えが返ってくる。
「え、と……あの………みんなも学校に、いかないと……」
「バカね! こんなトコにアンタ一人残して行けるわけないでしょ!!」
「そーだ!! 出てこいリサをイジメた奴ーーー!!!」
「サ、サンジ君……!」
「大丈夫ですレディ、貴方の騎士が必ずや敵を仕留めてみせます」
一縷の願いを篭めて縋りついたサンジには右手の甲にキスを贈られる始末だ。
隣に立つだけのゾロは止めてくれる様子はない。
むしろ、フラれた腹いせに嵌めるなどという外道に一番腹を立てているのが彼なのだが、リサがそれを知ることはない。
「出てこーい!!」
「ルフィ! サンジ君!! とっとと探し出してとっちめるわよ!!」
「はーーい、ナミすわああぁぁん!!」
銘々叫びながら学校の敷地内へと走って行く。
ぽつんと取り残されたリサがどうしたものかと途方に暮れていると、隣のゾロがポンと肩を叩いた。
「ゾロ君、」
「ま、なるようになんだろ」
「だって……他校生なんだよ? もし皆が何か大変な目に遭ったら……」
「そんときゃそん時だ」
行くぞ。歩き出したゾロに慌てて後を追った。
「何だ君たちは!!?」
「他校生がどうしてここに……!?」
「あ!! あの人知ってる!」
あちこちから聞こえてくる教師や生徒たちの声。リサは眉を下げてゾロを見た。
けれど、ゾロは楽しげに口端を上げるばかりで彼らを止めようとする気配はない。
「リサ! アンタ何組だっけ!?」
「え、えっと……」
「大丈夫だ! 俺らに任せろ!!!」
「大船に乗った気でいてくださいレディ!!」
目的の人物を見つけられなかったらしい三人が口々に叫びながら物凄い勢いでこちらに向かってくる。
生徒たちの信じられないという視線を受けながら、リサは口元を引き攣らせた。
「あ、あの……本当に、その………」
「何言ってんのよ! ここまで来て引き下がるわけにはいかないわ!!」
「何言ってんだナミ! 俺は引きさがらねぇぞ!!」
「たりめぇだ! リサちゃんを放っておけるか!!」
「――つーわけだ。諦めて教えとけよ、お前のクラス」
「ゾ、ゾロ君……!」
とうとうゾロまであちら側に行ってしまった。
自信満々の笑みを浮かべる四人を順番に見つめて――観念した。
「三組、です」
「よし! 行くぞ野郎共オオォォォ!!!」
「「「おぉ!!!」」」
ゾロ、サンジ、ナミを従えて三組の教室へ向かうルフィ。
廊下に集まる生徒たちの視線を物ともせずに目的地へと進む彼らの顔に迷いはない。
かっこいい。素直にそう思った。
「――ルフィ!」
「んんっ? 何だ?」
振り返りトレードマークの麦わら帽子を押さえたルフィに、苦笑を一つ。
「そっち、反対」
「お?」
「何よルフィ、格好つかないじゃない!」
「おろすぞクソゴム!」
「ったく……ほら、三組はこっちだぞ」
ナミとサンジに拳と蹴りを頂戴するルフィを放って一人歩き出すゾロが迷子になりかけたことは言うまでもない。
「やっと着いた!」
「ったく、何だってこんな近い場所に行くのに時間かかってんだ」
「テメェの所為だろうがクソマリモ!!」
「あー、もう! いい加減にしなさいよアンタ達!! リサ、ここで合ってるのね?」
覚悟は出来たか?
四人の目がそう訴える。
深呼吸をして、リサはしっかりと頷いた。
「大丈夫」
強い眼差しに表情を和らげた四人は、顔を見合わせて互いに頷き合い、
ガラガラッ
勢いよく扉を開けた。