キングズ・クロス駅、九と四分の三番線。
全てはこのゲートから始まった。
「忘れモンはねぇな?」
「んー、多分。大丈夫だと思うけど……」
「もう取りに戻れねぇぞい」
「え、うそ? 私またいつか戻りたいんだけど」
「暫くは戻れねぇよい。アイツらが帰してくれるとは思えねぇ」
船で待つ家族を思い浮かべて笑うマルコに、リサも笑って。
「しょうがないなぁ、暫くは家族孝行してあげようかな!」
「偉そうに」
「マルコにはしてやんない」
ふん。鼻を鳴らしたリサに、いらねぇよい。マルコが答える。
「もっと別のモン寄越せ」
「は? 何それ」
訝しげに眉を寄せて振り向いたリサの顔に、マルコの顔が近付いて。
「…………はい?」
え、何これ。今の何。
呆然と間抜け面を曝け出すリサに、ニヤリと笑ったマルコがそっと耳に唇を寄せた。
「大人になったんだっけか?」
なら分かるだろい。くつくつ笑うマルコがリサの手を引いて歩き出す。
文句を言うことも昔のように殴ることすらも出来ないリサの顔は、驚くほどに真っ赤に染まっている。
「あぁ、言い忘れてた」
「、な、なに」
相変わらず赤い顔のまま構えるように聞き返したリサを見下ろして、マルコが何でもないことのように続ける。
「戻ったら結婚するぞい」
「、は?」
「前に言ってただろうが」
「は、……え??」
ごめんちょっと何言ってるか分からない。
相変わらず馬鹿だなお前は。
「け、こん?」
「おー」
「マルコが?」
「おー」
「誰と?」
「お前と」
「…………は!!?」
「オヤジに誓っただろうが」
「誓ったのアンタだけでしょうが……!!」
何言ってんだコイツ!!
叫ぶリサを抱き寄せて、マルコはゲートへの最後の一歩を踏み出した。
「『絶対泣かせねぇ、幸せにする』」
「………!!!」
ずるい!ムカつく!腹立つ!!
リサの叫び声とマルコの笑い声を残して、二人はゲートの向こうへ消えた。
全てはこのゲートから始まった。
またここから、新たに始まるのだろう。
「ただいま!!!」
たくさんの家族と共に、幸せいっぱいの冒険の旅が。