03


「ちょっと待てよい」

船に置いて欲しいという少女の言葉を受けて真っ先に声を上げたのはマルコだった。

「ここは海賊船だい。女を乗せるなんて出来る訳ねぇだろい」
「海賊になります、置いてください」
「第一、俺らはお前の素性だって何も知らねぇってのに――」
「あら、じゃあ貴方はこの船にいる全員の素性を知ってるとでも言うの? 『赤竜』の素性は知らないみたいだけど?」

すぐさま返ってきた少女の偉そうな物言いと言われた言葉にマルコはあからさまに顔を顰めた。そんなマルコを宥めるように肩に手を置いてレイが少女に尋ねる。

「名前は?」
「リサ」
「アヤの娘って言ったよな。つー事は……」
「そう。貴方の妹の娘が私」
「つまり、姪って事か?」

クルー達の間から出て来たサッチが「へぇ」と感心したようにリサとレイを見比べた。

「まぁ、言われてみれば……似てねぇな」
「髪の色も目の色も違ェしよ」
「顔の造りは……まぁ、似てるっちゃ似てる、かも?」
「そうかぁ?」

クルー達も同じようにレイとリサを見比べて口々に意見を述べる。

「似てなくて当然よ。『赤竜』の姿が昔と違うんだもの」
「そうなのか?」
「黒髪に黒目だったはずよ。『秘宝』を口にするまでは」
「その『秘宝』ってのは何なんだ?」

サッチが問うとレイは肩を竦めた。

「『秘宝』ってのは、ファンロン諸島特有の呼び方だ。ここでの『悪魔の実』の事さ」
「え? じゃあ、つまり」
「秘宝ってのは」
「あぁ。俺が食べた実の事だよ」
「食べたら髪と目の色が変わんのか!?」
「あぁ」

頷くレイを冷めた目で見遣り、リサは白ひげを見上げた。

「置いてくれますか?」

白ひげは膝に置いていた酒瓶を呷って飲み干してから立ち上がり、自分の腰ほどもない小さなリサを見下ろした。

「この船は海賊戦だ。生命の保証は出来ねぇぞ」
「構いません」
「さっきこの船が大きく揺れたが、あれァお前の仕業か?」
「…………」

白ひげをじっと見上げたまま何かを思案していたリサは、やがて一つ頷いた。

「えぇ、私の仕業です」
「そうか。グラララ」

椅子の裏に転がっていた新しい酒瓶を拾い、椅子に腰を下ろしながら白ひげはニヤリと笑った。

「好きにしろ」
「オヤジ!?」
「コイツを乗せるのかよい!?」

サッチとマルコが即座に声を上げる。しかし、白ひげは一つ頷いて酒の栓を抜くと豪快に呷った。口端から零れた酒を手で拭い、リサを見下ろしてから声を張り上げた。

「野郎共! 新しい家族だ!! 仲良くしやがれ!!」

けれど、クルー達はそれぞれ顔を見合わせて戸惑っている。

「何だァ? 俺の声が聞こえなかったのか?」
「お、おおおぉぉぉ!!」

クルーの一人が拳を突き上げて声を張り上げると、次々に了承の声が湧き上がった。それは波紋のように広がり、やがて甲板中が再び盛り上がって宴会を再開した。

「新しい家族だああぁぁ!!」
「妹だぞ妹!!」
「「「宴だああぁぁぁっ!!!」」」

サッチも肩を竦めて笑い、レイも微笑んだ。マルコだけは未だ納得いかない様子だったが、異を唱える事はしなかった。

「新しい妹に!!」
「「「カンパアアァァァァイ!!!」」」

そこ彼処で再開する酒盛りを冷めた目で見つめていたリサだったが、白ひげはその口元がほんの少しだけ緩んだのを見逃さなかった。

「グララララ」

声を上げて笑い、再び豪快に酒を煽るのだった。