……
……
……
782 ななしの元審神者
政府の役人が来た
783 ななしの審神者
>>782
784 ななしの審神者
まじか
785 ななしの審神者
何て言われた?
786 ななしの審神者
鶴丸どうなるって?
787 ななしの元審神者
役人が本丸に行った時に鶴丸が行方不明になったことを知ったらしい
ちなみに私の所に来てから3度目で漸く気付いたらしいよ
刀剣たちからは何も言われてなかったみたい
新しい審神者を招くことになったから全振りに集合かけた時にいないことに気付いたんだってさ
788 ななしの審神者
政府ェ……
789 ななしの審神者
また新しい審神者入るのか
790 ななしの審神者
まぁ、そりゃそうだよな
791 ななしの審神者
いつまでも不在にしてらんないもんなぁ……
792 ななしの審神者
政府はどうやって元審神者のとこにいるって知ったんだ?
793 ななしの元審神者
どこに行ったのかって尋ねたら知らないって言われたって
いつの間にかいなくなっていたって皆が言ったらしい
光忠と倶利伽羅が「行く所があるって出て行った」って言ったらしい
そんで色々捜索したけどいなくて、まさかそんなはずはないって思いながらも私の所に来たって話
794 ななしの審神者
そりゃ元審神者の所だなんて夢にも思わないよな
795 ななしの審神者
鶴丸も追い出した側だもんなぁ
796 ななしの審神者
で、鶴丸どうなったんだ?
797 ななしの審神者
本丸に帰るのか?
798 ななしの元審神者
帰らないみたい
799 ななしの審神者
まじで?政府が許したのか?
800 ななしの元審神者
鶴丸国永が行方不明だが消息を知っているかって聞かれた
カメラ越しに役人の姿を確認した時点で鶴丸に「どうする?」って聞いてたんだけど「連れ戻されるから言わないでくれ」って言われた
だからドア開けた時に「連れ戻されたくないから、いることを言わないでくれと言われました」って答えた。聞き耳立ててた鶴丸がドア開けて「うぉい!!」って全力でツッコんでた。役人呆然としてた
801 ななしの審神者
うぉい!!
802 ななしの審神者
そりゃ役人も驚くわwwwwww
803 ななしの審神者
つか、言ったら連れ戻されるだろうが!
804 ななしの審神者
あれ、でも連れ戻されないって言ったよね?
805 ななしの元審神者
困り果てた役人(超下っ端)が上司に連絡取ったら上司が来た
それで鶴丸にどうやってここに来たのかって聞いた
鶴丸は私の霊力を辿って来たって答えた。本丸に戻るつもりはないとも言った
上司が私にどうにかして説得しろって言った。私は無理ですって答えた
私「主でもない私の言うこと聞くわけないじゃないですか」
鶴「はっはっは!そりゃそうだ」
上司も下っ端も頭抱えてた
806 ななしの審神者
そりゃそうだ
807 ななしの審神者
役人ズどんまい……www
808 ななしの審神者
そんでそんで?続きは?
809 ななしの元審神者
上司が鶴丸にどうしたいのかって尋ねた。鶴丸は私といるって答えた
私「帰ればいいじゃん」
鶴「はっはっは、まぁ聞く気はないんだけどな」
主じゃないもんね、私
810 ななしの審神者
鶴丸ェ……
811 ななしの審神者
ここに来て傲慢な神様ぶりを発揮してやがる
812 ななしの審神者
いや、待て。こいつ最初からずっとこうだぞ
813 ななしの審神者
確かに
814 ななしの元審神者
上司も下っ端も鶴丸が勝手にうちに居座ってるんだって理解した
鶴丸に本丸に戻ってくれって何度もお願いしてたけど断られて泣きそうだった
鶴「そうだなぁ……彼女がもう一度審神者になると言うのなら」
上「本当ですか!」
鶴「俺も彼女の新しい本丸に行こうじゃないか」
下「先輩、良かったですね!」
上「あぁ!では貴方にはもう一度審神者に……」
私「はっ」(嘲笑)
上司と下っ端震え上がったけど気にしない
鶴丸は楽しそうに声上げて笑ってた
815 ななしの審神者
はっ(嘲笑)
816 ななしの審神者
三十路の嘲笑こあい……
817 ななしの審神者
鶴「まぁ、きみは嫌がるだろうなぁ」
私「分かってんならややこしくなるようなこと言わないでよ」
上「で、ですが!刀剣男士が現世にいるというのは問題です!」
私「私が呼んだわけじゃないし」
下「で、でも!貴方の霊力で顕現が保たれてますし!」
私「鶴丸が勝手に吸い取ってるだけ」
鶴「いやぁ、きみの手入れを受けておいて良かった。おかげでここまで来れたし、さした苦労もなくもらえてるからな!」
上「鶴丸様ぁ!」(半泣き)
下「せんぱぁい!」(半泣き)
818 ななしの審神者
上司と部下が可哀想すぎるwwwwww
819 ななしの審神者
割と大変な事態だってのにくっそ笑えるwwwwww
820 ななしの審神者
鶴丸と元審神者に緊張感の欠片もないからだな
821 ななしの審神者
確かに
822 ななしの審神者
それで結局どうなったの?役人たち帰ったの?
823 ななしの元審神者
更に上に連絡して返事待ち
今は一緒に家にいる
下「あれ?何で端末持ってるんですか?」
鶴「持ってきた」
上「そ、そんなはずはありません!貴方の本丸には審神者がいないから端末があるわけ……」
鶴「前に主がうっかり失くした端末を偶然見つけてな。困った時の為にと持ってきたんだ」
リアルorzする上司と部下に笑う鶴丸
そんな三人を眺めながらスレに書き込んでるなう
824 ななしの審神者
隠したのwwwお前だろうがwwwwwwww
主の所為にすんなwwwwwwwwwww
825 ななしの審神者
役人ほんとどんまいすぎるwwwwwwwwww
826 ななしの審神者
くっそwwwwwww
827 ななしの審神者
でもさ、真面目な話これから元審神者はどうすんの?
828 ななしの審神者
審神者になるの?
829 ななしの元審神者
なるつもりは欠片もない
830 ななしの審神者
でもさ、鶴丸がどうしても元審神者と離れたくないって言ったら強制徴兵されたりしない?
831 ななしの審神者
鶴丸は元審神者が審神者になるならその本丸に行くって言ってるしなぁ……
832 ななしの審神者
辛いこと言うようだけど、たぶん元審神者はこれまで通りの生活は出来なくなるよ
833 ななしの元審神者
そうだろうね
834 ななしの審神者
割とあっさりしてんな……覚悟は出来てんのか?
835 ななしの元審神者
まさか
836 ななしの審神者
でも、じゃあどうするんだ?
837 ななしの審神者
鶴丸に「本丸に帰って」ってお願いしたら帰ってくれるか?
838 ななしの審神者
個人的には鶴丸と離れてほしくない……
このスレも続いて欲しいから、自分としては元審神者に審神者になって欲しいって思うよ
839 ななしの審神者
そしたら演練とかで会えるかもだしな
840 ななしの元審神者
上から連絡きたみたい
上司が申し訳なさそうな顔で「審神者になってもらいます」って言ってきた
私「なるつもりないんだけど」
上「申し訳ありません……」
下「で、でも、ほら!審神者になれば鶴丸様と一緒にいられますよ!」
私「そもそも、私が望んで招いたわけじゃないんだけど」
鶴「俺が勝手に押しかけて居座っただけだからなぁ」
呑気に茶を啜ってる元凶にイラッとしたから、おやつの煎餅取り上げてバリムシャアしたら泣いた
鶴「俺の……っ、俺の煎餅……!」
私「ムシャクシャしてやった。後悔はしてない」
鶴「反省してくれ!振りでもいいから!」
私「はいはいブーメランブーメラン」
本気で落ち込んでたから仕方なく煎餅ちょっとだけあげたら喜んだ。ちょろい
841 ななしの審神者
煎餅ェ……
842 ななしの審神者
お前らどっちも危機感持とうぜ!?
843 ななしの審神者
お前らのこれからのこと話し合ってるんだからな!?
844 ななしの審神者
でもこれは呑気に茶を啜ってた鶴丸が悪い
845 ななしの審神者
確かにな
まぁ鶴丸としては元審神者と一緒にいられれば良いわけだから、審神者が審神者に戻ろうが戻るまいがどうだって良いんだろ
846 ななしの審神者
鶴丸ェ……
847 ななしの元審神者
とりあえず一緒に政府に来てくれって言われたけど、これ行ったらアカンやつ
上の者も交えて話をしたいって言うけど、それ嘘だから。元審神者知ってる
政府に連れてく振りして新しい本丸なりに放り込むんでしょ。元審神者知ってる
848 ななしの審神者
俺も知ってる
849 ななしの審神者
間違いなくそのパターンだわ
850 ななしの審神者
そんなもんだよな、政府
851 ななしの審神者
政府に夢を見ちゃいけない
852 ななしの元審神者
政府の信用なさすぎワロタ
どうしても拒むというのなら、家族の無事を保証出来ないって言われた
私「そうですか」
下「い、いいんですか!?」
私「だってもう全員死んでるし」
最初に審神者になったのだって、家族が死んで他に行くとこも金もなかったからだし
私「ちゃんと調べてから言おうね、そういう脅しは」
上「」
下「」
鶴「大変な人生送ってるなぁ、きみも」
そうだね
853 ななしの審神者
元審神者……
854 ななしの審神者
役人ズの無能ぶりよ……
855 ななしの審神者
お前らそれくらい調べてから行ってやれよ……
856 ななしの審神者
ちょっと泣けた
857 ななしの審神者
なぁ、元審神者
もしかしたらお前はもう刀剣たちのこと好きじゃないかもしれないけどさ
すげーいい奴らだよ。俺も親死んじゃって審神者になったけど、新しい家族出来てすげー楽しいよ
最初は嫌かもしんないけど、自分でちゃんと顕現した刀剣たちは必ず元審神者のこと大事にしてくれるから
858 ななしの審神者
確かにな
もう一回だけ信じてみてくれないか?
859 ななしの審神者
新しい本丸でさ、やり直してみようぜ
俺らも出来る限り協力するから
860 ななしの元審神者
鶴「いい奴らだなぁ。で、どうするんだ?審神者になるのか?」
私「めんどい」
861 858
862 857
863 859
864 ななしの審神者
おい……
865 ななしの審神者
審神者ェ……
866 ななしの審神者
そんな身も蓋もない……
867 ななしの審神者
(ごめん、ちょっと笑ったww)
868 ななしの審神者
(私もwwwでもそれでこそ元審神者だって思っちゃうwww)
869 ななしの元審神者
上「どうしても嫌だと仰るのなら、とりあえず今日の所は帰ります」
元「そうですか」
上「あ、そうだ。その端末は回収させて頂きますね。現世に置いておくわけにはいきませんから」
鶴「新しい本丸へ行く」
元「は?」
鶴「何をしてるんだ、ぐずぐずしてないでさっさと用意してくれ」
元「…………そんなに端末手放したくないの?」
鶴「あぁ!!ほら、早く!!」
どういうことなの
870 ななしの審神者
鶴wwwwwwww丸wwwwwwwwwwwww
871 ななしの審神者
おwwww前wwwwwwwwwwwww
872 ななしの審神者
ファーーーーーーーーーーーーwwwwwwwwwwwwwwwwww
873 ななしの審神者
これはひどい
874 ななしの審神者
何ということでしょう
875 ななしの審神者
端末の為に元審神者の未来を変えやがったwwwwwwwwwwww
876 ななしの審神者
元審神者が哀れすぎるwwwwwwwwww
877 ななしの元審神者
仕方ないだろう、俺はこれを手放したくないんだ
878 ななしの審神者
>>877
879 ななしの審神者
>>877
880 ななしの審神者
元審神者は?
881 ななしの審神者
亀のような遅さで用意してる
882 ななしの審神者
亀www
883 ななしの審神者
鶴丸、ほんとにそれでいいの?
884 ななしの審神者
ん?
885 ななしの審神者
元審神者は優しいから何も言わないかもだけど
正直、私が元審神者の立場だったら鶴丸のこと大っ嫌いだよ
886 ななしの元審神者
そうだろうな
887 ななしの審神者
元審神者も口に出さないだけで嫌いって思ってるかもよ
こんな風に端末一つの為に元審神者の人生狂わせていいと思ってるの?
888 ななしの審神者
(ゾロ目ゲットしたけどお口ミッフィーしとく(・×・))
889 ななしの元審神者
元審神者は俺を嫌ってない
890 ななしの審神者
どうして分かるの?胸糞だって自覚するほど酷いことして追い出したんでしょう?
891 ななしの元審神者
俺に傷付けられた彼女はもう死んだ
892 ななしの審神者
は?
893 ななしの審神者
何て?
894 ななしの審神者
前にも殺したとか言ってたけど、それどういう意味?
895 ななしの元審神者
遅いから急かしてくる
また後でな
896 ななしの審神者
おいいいいいいぃぃぃぃ!!??
897 ななしの審神者
鶴丸うううぅぅぅぅぅぅ!!!
……
……
……
予想外にも、役人たちに連れて行かれた先は政府の建物だった。一室に通されて白い神と共に待つこと十数分。やって来たのは覚えのある顔だった。審神者だった頃に本丸の担当を務めていた男だ。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「見ての通りです」
男は微笑み正面の席についた。この数年で出世したらしく、彼が上司の更に上の者だそうだ。つまりはこの元担当によって連れ戻されたことになる。
「あんな風に追い出された私をまた審神者にするんですか?」
「貴方に非はありませんでした。担当だった私が言うんですから間違いありませんよ。鶴丸様もそう思うでしょう?」
話を振られた白い神が端末から顔を上げた。ちらりとこちらを見て「まぁ、そうだな」と上機嫌に笑む。
「きみはきっといい審神者になれるさ」
「鶴丸に言われても嬉しくないかな」
「はっはっは、そりゃそうだ」
からりと笑った白い神が上機嫌に端末を操作するのを尻目に溜息。自分はこれからどうすれば良いのかと聞けば新しい本丸を与えてくれると元担当は言った。
「もし、あの本丸へ戻ることを望むのであれば……」
「いえ、まったく」
「でしょうね。ですので新しい本丸をご用意します。初期刀を選び、鶴丸様と共にそちらへ向かってください。こんのすけは手配しておきましたので」
「分かりました」
あの頃はもらえなかった初期刀。提示された五振りの打刀から一振りを選んで指し示すと元担当が困ったように笑った。
「よろしいんですか?」
「はい」
「……では、どうぞ。ご健闘を祈ります」
「どうも」
与えられた一振りの刀を抱えてゲートを潜る。荷物は既に本丸に送られているのだと聞いた。
屋敷の前でちょこんと座っているこんのすけの姿を遠くに見つけてそちらへ歩きだす。まさか、また審神者になるなんてと手の中の刀を見つめていると隣から感じる視線。清白な出で立ちの神がじっとこちらを見ていた。
「何?」
「良かったのか」
「何が」
「それ」
手の中の刀を顎で指す神様につられて視線を落とす。この刀を顕現すれば、あの目に痛い綺羅びやかな甲冑を纏った紫髪の美青年が姿を現すのだろう。
蜂須賀虎徹。あの本丸において前任の初期刀として顕現された刀剣男士であり、審神者にどうか出て行ってくれと頭を下げて頼んだ刀剣男士。審神者としての自分に止めを刺した刀剣男士だ。
「いいんだよ」
「そうか」
「やっと初期刀をもらえた」
あの頃はもらえなかったと微かに笑いを零せば、端末をいじっていた白い神がこちらを見てにやりと笑い立ち止まった。何故この付喪神はこんなにも上機嫌なのだろうか。
「俺が初期刀になってやろうか」
「え、私の刀になる気あったの?」
驚いて見つめれば、虚を突かれた様子の鶴丸国永が元審神者――もとい審神者を見る。珍しくおかしな顔をする鶴丸に「変な顔」と指摘すれば、どこか拗ねた顔の鶴丸が端末を懐にしまいながら「まったく」とぼやいた。
「きみはずるい」
「何が」
「結局、一度も俺に尋ねてくれなかったじゃないか」
「何を?」
話が見えないと眉根を寄せれば鶴丸が突然走り出す。何なのだ一体。この白い神の考えは全く理解出来ない。溜息を零しながら遠ざかる白い背を眺めていると、数メートル先で足を止めた鶴丸がくるりと振り返った。バッと大きく開かれた腕に目を瞬く。
そんな審神者に鶴丸は笑った。満面の笑みだった。
「どうだ! 新しい本丸だ!!」
「……?」
それがどうしたのかと首を傾げた。鶴丸はやはり笑っていた。
「引き継ぎじゃない、真新しい本丸だ!!」
「、」
息が止まった。だって、それは。
「これで、きみは幸せに暮らすことが出来る! きみが顕現した刀剣たちと一緒にだ!」
それは、前に。
不意に審神者の脳裏に過去の風景が蘇った。あれは秋だ。月の美しい夜だった。赤々と色づいた葉が月に照らされて綺麗だったのをよく覚えている。屋敷から漏れる灯りを遠くに眺め、独り寂しい離れにいる事実に酷く打ちのめされていた。誰も認めてくれる者はいなかった。手を差し伸べてくれる者はいなかった。
”きみ、また泣いてるのか”
白い神は気紛れに離れを訪れた。それは泣いている時だったり、洗濯をしている時だったり。寝ている時にも忍び込んできては「どうだ、驚いたか!」なんて笑っていたのを思い出す。
”逃げたいとは思わないのか”
”逃げたいよ。でも逃げられない。行く場所がないの”
”きみは可哀想だな。ここではなく新たな本丸をもらえてさえいれば幸せに暮らせただろうに”
”……そうだね……新しい本丸で、自分で顕現した皆となら……幸せに暮らせたのかな”
離れは寂しかった。隙間風など入り込む隙はなかったというのに、いつだって寒かった。寒くて、寂しくて、恋しかった。不意にやって来る気まぐれな白い神の来訪をどれほど待ち望んだことか。
気紛れだということは知っていた。彼とて他の刀剣達と一緒で前の主を忘れていなかった。認めてはくれなかった。他の神より好奇心旺盛だったからか、気紛れにふらりとやって来ては哀れな人間に同情していただけなのだ。退屈を紛らわす為に来ていた。ただそれだけだ。
あの時もそうだった。気紛れにやって来ては泣き虫な人間に「可哀想に」と同情するだけ。早く審神者を辞めるべきだと言われたこともあった。ここにいない方が良いとも言われた。それでも必死に努力する姿に何を思ったのだろうか。
”なぁ、俺にどうして欲しい”
”え?”
”俺ならきみを助けてやることが出来る”
慈しむような眼差しを真正面から受けたその瞬間、何かがぷつりと音を立てて切れた。気付けば熱いものが頬を伝っていた。助けて。助けて。苦しい。寂しい。辛い。想いが声になることはなかった。時折漏れる嗚咽が『彼女』の悲鳴だった。
幸せになりたいかと白い神は言った。『彼女』は泣きながら何度も頷いた。助けを求めて泣き縋る『彼女』の手は白い神の大きな手に包み込まれた。
”あぁ、分かった。きみを助けよう”
白い神は優しくそう囁いた。甘く、優しく、愛おしげに微笑みそう言った。近付く顔にそっと目を伏せて初めての温もりを唇に受けた。壊れ物に触れるかのように大切そうに肌を滑る手が、愛おしさに満ちた目が、紡がれる優しい言葉が傷付いた心に染み渡っていくのが分かった。
彼が助けてくれるのだと思えば心が弾んだ。もう辛い日々は終わるはずだ。彼はきっと仲間たちを説得してくれるのだろう。少しずつでいい。彼らと打ち解けることが出来れば、共に笑い合える日が来れば――だが、その日は永遠に来なかった。彼は刀剣たちに何と言ったのだろうか。大事な話があると言われて屋敷へ赴くと広間には本丸中の刀剣男士たちが揃っていて、努力は報われるのだと喜んだ。何度も夢に見た幸せが手に入るのだと頬が緩んだ。
”出て行ってくれ”
え、と漏れた声は誰にも届かなかった。予想だにしなかった台詞を口にした白い神は笑っていた。きみはこの本丸にいるべきではないと言った。笑顔だった。刀剣男士たちも彼の神に賛同した。
”ど、して……”
”この本丸にきみの居場所はない。出て行ってくれ”
彼の目は愛おしさに満ちていた。その優しい声音もあの夜のものと同じだった。だからこそ放たれる言葉が突き刺さった。どうして。どうして、どうして、どうして――何てことはない。この白い神はただ邪魔な人間を追い出したかっただけなのだ。追い出す方法が他の刀剣達と違っただけ。全てを理解して『彼女』の心は砕けた。彼によって癒やされようとしていたそれが音を立てて崩れていくのが分かった。
この日、『彼女』は鶴丸国永によって殺されたのだ。
”さよならだ”
朗らかに笑う白い神を見ることは出来なかった。甘い夢に溺れた愚かな自分が恥ずかしかった。ゲートまで見送ると言ってついてきた白い神はやはり笑顔で、何故そんなにも笑顔でいられるのか理解出来なかった。人ではないこの白い神とは分かり合うことなど出来ないのだと思い知らされた。
”なぁ、――――――”
最後に彼は何と言ったのだろうか。もう何も聞きたくないとゲートに逃げ込んでしまったから、彼の最後の言葉は分からないままだ。
審神者は目の前に立つ白い神を見上げた。あの頃と何一つ変わらない彼は、あの時と同じ眼差しで審神者を見下ろしている。
「なんて、いったの。さいご」
「やっと聞く気になったのか?」
あの時と同じだ。熱いものが頬を伝っていた。頬を緩めた白い神の手が伸びてくるのが視界の端に映った。頬に触れる手に体が揺れる。小さく笑みを零した白い神が額を寄せてくる。
どうしてだろうか。あの夜の彼が囁いてくるのだ。もうずっと思い出さないようにしていたのに。もう完全に忘れられたと思っていたのに。
「これでも焦ったんだぜ。俺の予定じゃ、きみはあの後すぐに新しい本丸に行くはずだった」
新しい本丸で今度こそ幸せに暮らすはずだった。それが鶴丸国永の思い描いていたシナリオだった。傷付けた自覚はあった。彼女の心を酷く傷付ける行為だと分かっていた。それでも彼女はこの本丸から逃げることが出来る。前の主に縛られた刀剣男士たちから逃げる口実が出来る。
だが彼女は鶴丸の考えた通りにはならなかった。新しい審神者を配属させると伝えに来た役人に「彼女は元気にやってるのか」と尋ねてみれば、あの後すぐに審神者を辞めて現世に戻ったと言われた。何を言っているのだと思った。そんなはずはない。だって、それでは自分は何の為に。
「だから、きたの」
「現世にいたってきみの幸せはない。現に俺が行った時、きみはちっとも幸せそうに見えなかった」
家族もいない。多くの神に傷付けられた。傷付いた身も心も慰めてくれた男には更に大きな傷を付けられた。心が死んだ状態で独りで生きたって幸せなど感じるはずがない。鶴丸の予定では彼女は新たな本丸で自分で顕現した刀剣男士たちに救われるはずだった。決して認めようとしなかった頑なな刀剣男士たちのことも、こっぴどく傷付けた酷い男のことも忘れて幸せになるはずだった。死んでしまった『彼女』を彼女の刀剣たちが生き返らせるはずだった。
「上手くいかないもんだ」
苦笑する鶴丸に審神者は顔を歪めた。湧き上がる感情に頭がついていかない。頭を抱えて、首を振って、嗚咽を漏らして。背を撫でられる感触に顔を上げればすぐそこには大嫌いな男の顔がある。大嫌いだ。助けてくれると言ったのに。裏切られたと思ったのに。
頬を伝う涙を拭って審神者は奥歯を噛みしめた。酷い顔だと笑う鶴丸に手を伸ばし、肉の少ない頬をめいっぱい抓ってやる。鶴丸が悲鳴を上げたが知るものか。思い知ればいい。受けた痛みを、この苛立ちを、やるせない思いを。存分に味わい思い知ればいいのだ。
「何するんだ!」
涙を滲ませながら怒る鶴丸に追い打ちをかけるかのように、審神者は手にした蜂須賀虎徹で殴りかかった。「うおっ!」と声を上げながらもあっさり避ける鶴丸に舌打ちをすれば「そういう使い方じゃないぞ!」と怒られる。そんなこと知るものか。手にあるものがこれなのだから仕方がない。何度も殴りかかては何度も避けられた。当たらない。
「っ、ばーーーーーーか!!!」
悔し紛れに腹の底から絞り出した叫びは何とも幼稚だった。目を瞠った鶴丸が声を上げて笑う。それがまた腹立たしいことこの上ない。また殴りかかって、また避けられて。暴れ疲れて息を切らす審神者の前にひょっこり現れた顔はやはり笑顔だった。
「きみ、少しは運動したほうが良いぜ」
「うっさい!」
すぐそこにある薄い腹に拳をめり込ませる。不意打ちで仕掛けたはずなのに鶴丸は全くダメージを受けた様子がない。畜生。吐き捨てると「口が悪いなぁ」と笑われた。笑うなと言えば更に笑われた。
「そんなの、そんなのずるい……!」
「あぁ」
「どうしてよ……っ」
「すまない」
「ばか、ばか、ばか!」
「分かってる」
唇から勝手に零れ落ちる声を一つ一つ拾っては律儀に返事をしていく鶴丸の声は酷く甘く優しかった。硬く握りしめたままの拳を大きな手が包み込み、そのまま招かれる先は白い神の唇だ。微かに震える拳に、祈るように目を伏せた白い神の口付けがそっと落とされる――その様子はまるで神への祈りにも似ていた。
「やっとだ。やっと、きみを助けることが出来た」
湿った吐息が鶴丸の口から零れ落ちた。審神者はくしゃりと泣きそうな顔で笑う鶴丸を睨みつけた。何て顔をしているのだと嗤ってやればいい。情けないと嘲笑って、全部裏目に出たじゃないかと文句を言ってやればいい。けれど、震える唇は意味もなく開閉するばかりで何の音も出してはくれない。
「謝る気はない。反省も後悔もしてない。ただ、俺にはもう帰る場所がないんだ。きみの所に置いちゃくれないか」
「…………本丸、帰ればいいじゃん」
「戻った所で俺には前の主の霊力が残っていない。すぐに顕現が解けて転がるだけさ」
「他の本丸にだって行ける」
こんなのただの言葉遊びだ。それでも審神者には必要だった。言葉が欲しかっただけだ。今度こそ間違えない為に。鶴丸国永という付喪神は全て勝手に考えて動いてしまうから、こうして言葉にしてもらわなければついていけないのだ。
「きみがいい」
審神者の考えを見抜いているのかいないのか、鶴丸は意味もない言葉遊びに付き合ってくれる。与えられる言葉が真実かどうかを見極めようとする審神者は鶴丸の目にどう映っているだろうか。
「俺は気紛れだからな。きみはこれからも俺に振り回されることになるんだろう」
「自分で言うの」
「あぁ。だから、たった一つ真実をきみに伝えておく。これだけは偽りじゃない。この刀に誓う」
己の刀を強く握りしめて宣言した鶴丸が身を屈めた。身構える審神者の耳元に寄せられた唇がそっと紡ぐのは、あの夜に聞いたのと同じ言葉だった。
「実を言うとな、あの時も本当だったんだ」
情けなく眉を下げた白い神はそう言って照れ臭そうに笑った。
……
……
……
272 ななしの審神者
その後は!?審神者!審神者の返事は!!?
273 ななしの元審神者
ぶん殴った
274 ななしの審神者
>>273
275 ななしの審神者
>>273 は?
276 ななしの審神者
ぱーどぅん?
277 ななしの元審神者
鶴「きみ、昔と違って暴力的になったな……」
私「誰の所為だろうね」
鶴「おかしいな……俺の予定ではここで泣きながら笑うきみを抱きしめて、愛を確かめ合うはずだったんだが……」
私「鶴丸の予定はすぐ狂うから立てるの止めた方がいいよ」
鶴「(´・ω・`)」
↑な顔してた鶴丸を放ってこんのすけに挨拶して蜂須賀呼び出した
鶴丸が「何で呼び出しちゃうんだ!初期刀は俺だろう!」って煩かった
278 ななしの審神者
元審神者ェ……
279 ななしの審神者
でもこれは仕方ない
私も殴る
280 ななしの審神者
私も殴る
つか、ハッチww呼び出しちゃったのwww
281 ななしの審神者
初期刀はハッチですね分かります
282 ななしの審神者
でも実際は鶴丸の方が先に霊力供給受けて顕現してるんだし、初期刀ってことにならないの?
283 ななしの元審神者
鶴丸には名乗られてなかったから
ちなみに蜂須賀にハッチってあだ名付けたらまた文句言われた
鶴「ずるい!俺も!俺も何か付けてくれ!」
私「じゃあ、シロ」
鶴「安直すぎる!!」
蜂「主……犬じゃないんだから……」
この時初めて刀剣男士に「主」って呼ばれた。あの頃一度も呼ばれなかった台詞だから、むず痒くてちょっとだけ頬が緩んじゃった。鶴丸が「俺が最初に呼びたかったのに!」って地面殴ってた
284 ななしの審神者
ことごとくハッチに敗けてる鶴丸wwwww
285 ななしの審神者
鶴丸wwwww
つか、こいつあんだけ色気漂わせなかったくせに実際はベタ惚れじゃねえかwwwww
286 ななしの審神者
それなwwwwwww
287 ななしの元審神者
鶴丸には主呼びされたくないって言った
今まで一度も呼ばれなかったし、今更鶴丸に呼ばれるのも何か気持ち悪いし
そしたら鶴丸が凄いショック受けた顔で「俺はいらないのか……!?」って言った。泣きそうだった
私「別にいらなくはないよ」
鶴「゚・*: . 。.☆ .(*´∀`*).☆.。.:*・゚」(桜が舞った)
ねぇ、これ誰だっけ?私の記憶の中の鶴丸と違いすぎて気持ち悪いんだけど
288 ななしの審神者
wwwwwwwwwwwwwwwww
289 ななしの審神者
確かにこれは気持ち悪いwwwwwww
290 ななしの審神者
まぁまぁwwwwww気持ち悪くても許してやれってwwwww
結果はアレだったけど、元審神者を助けたい一心だったんだろ?
291 ななしの審神者
ずっと独りで頑張ってた元審神者を助けたくて追い出したんだもんな
新しい本丸に行くと思ってたってことは、自分はもう会うつもりはなかったんだろ?
その時既に惚れてたんなら、相当な覚悟が要ったと思うよ
292 ななしの審神者
元審神者を追って現世に来たのも、幸せにする為だったんだもんなぁ
元審神者はどうなんだ?今も鶴丸のこと好きか?
293 ななしの元審神者
どうだろう
294 ななしの審神者
おいwww
295 ななしの元審神者
そこは好きだって言ってやれよ!!
296 ななしの審神者
ちゃんと幸せになれよ!!
297 ななしの元審神者
出来る限りのことはするよ
軽く本丸の掃除するから落ちるわ
演練で会ったらよろしくー
298 ななしの審神者
国!!どこの国か教えてくれ!!
299 ななしの審神者
鶴丸も元審神者もハッチも幸せになれよ!!
あと俺もお前らに会いたいから国教えてくれ!!
300 元審神者
色々ありがとう
今度は俺自身の手で彼女を幸せにしてみせるさ
掃除手伝えって言われたから俺も行って来る
301 ななしの審神者
鶴丸!!
302 ななしの審神者
元審神者もだけど、お前もちゃんと幸せになれよ!!
303 ななしの審神者
それな!元審神者のこと、ちゃんと守ってやってくれ!
304 ななしの審神者
スレどうするんだ?
この後も続けてくれるのか?
305 ななしの元審神者
いや、このスレはここで終わりにする
306 ななしの審神者
そんな!!
307 ななしの審神者
鶴丸ううううぅぅぅぅぅ!!!
308 ななしの審神者
どうか!!どうかあああああぁぁぁぁぁぁ!!!
309 ななしの元審神者
次はこっちな
つ【追い出された元審神者】幸せになる為のスレ【追い出した鶴丸】
310 ななしの審神者
>>309
311 ななしの審神者
>>309
312 ななしの審神者
>>309
313 ななしの審神者
>>309
314 ななしの審神者
>>309
315 ななしの元審神者
俺「なぁ、ちょっとこのボタン押してくれ」(端末差し出す)
主「スレより掃除しなさいって」(呆れながら画面を見ずにボタン押す)
俺「ありがとう!」
どうだ、驚いたか!!
316 ななしの審神者
おwwwまえwwwwwwwww
317 ななしの審神者
くっそwwwwwwwでも嬉しいのが悔しい!!wwwww
318 ななしの審神者
そういや鶴丸、元審神者を「主」って呼べたのか?
319 ななしの元審神者
(゜∀。)ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャ
320 ななしの審神者
wwwwwwwwwwwwwwwwwww
321 ななしの審神者
駄目だったんですねわかりますwwwwwwwww
322 ななしの審神者
把握wwwwww
323 ななしの元審神者
あっちのスレでの最初の安価は、主と呼ばせてもらう為に何をするかだ
いい案を出してくれよ!それじゃあまた後でな!
……
……
……
……
……
【追い出された元審神者】幸せになる為のスレ 3【追い出した鶴丸】
743 シロ
今日、演練で前にいた本丸の奴らに会った
俺が本丸を出た後にやって来た審神者の刀剣になったらしい
呪符の霊力が尽きて刀に戻った後、後任の審神者が根気よく刀に話しかけて手入れをしてくれていたそうだ。彼女を拒んでしまったから受け入れるわけにはいかないと言ったらしいが、一緒に謝りに行こうと説得されたらしい。俺が彼女と共にいて驚いていたな
彼女は謝罪を受け取らなかった。今更謝られても困ると言っていた
主「いいんです、私もちゃんと幸せになりますから。貴方達も幸せになってください」
蜂「…………ありがとう」(泣きそうだった)
別れた後に本当に良かったのかと尋ねた
俺「殴ってやれば良かったじゃないか」
主「殴ったって何にもならないし。めいっぱい幸せになる。それが追い出された私の復讐かな」
そう言って彼女は少しだけ笑った
最近よく笑うようになった。可愛かったから抱きしめた。殴られた
俺「きみ、そろそろ俺に優しくしても罰は当たらないと思うぜ」
主「殴ってやればいいって言ったじゃん」
俺「殴ったって何にもならないって言ったじゃないか!」
744 ななしの審神者
途中までは良かったのにwwwwwwww
745 ななしの審神者
俺らの感動を返せ!!!
746 ななしの審神者
でも前の本丸の奴らも元気にやってるなら良かったよ
呪符の霊力だっていつまでも残ってるわけじゃないもんな
747 ななしの審神者
憶測でしかないけどさ、呪符の霊力が尽きたらその後は新しい主を受け入れて元気にやれよってことだったのかなって思う。元審神者からしたら迷惑極まりないだろうけど、刀剣たちからすればそんなにすぐに割り切れることじゃないしね
748 ななしの審神者
つまり政府の配慮が足りなかったってことか
749 シロ
そういうことなのかもな
歩きながら端末いじるなと言われたから落ちる。また後でな
750 ななしの審神者
元審神者のオカンっぷりが止まるところを知らない件
751 シロ
それな
752 ななしの審神者
お前が言うのかwwww
……
……
……
端末を懐に押し込んだ鶴丸が主である審神者の元へ駆けていくのを、蜂須賀虎徹は苦笑と共に見送った。
「まったく……素直じゃないよね、主さんも」
「傍から見ればただのバカップルだよね」
呆れ返った様子の乱藤四郎と加州清光にも苦笑を返して後ろを振り返る。年若い男と共に歩いて行くあちらの自分たちの後ろ姿を眺めていると、不意に蜂須賀虎徹が振り返った。かち合った視線に驚いたがそれはすぐに逸れることとなった。あちらの自分が見ているのは蜂須賀ではない。その背後だ。
目を細めて恭しくお辞儀をする彼に、きっと彼女は微塵も気付いていないのだろう。蜂須賀虎徹にだって分かっているはずだ。そんなもの今更でしかない。
「馬鹿だね、あっちの俺たち」
隣に並んだ加州が無感動の眼差しを彼らに向けた。新しい主に並んだ蜂須賀虎徹はもうこちらを振り返らない。それが彼らの選んだ道だ。彼女の道とは交わらなかったのだ。
「うちの主、いい人間なのに」
「知らないんだろう。知ろうとすらしなかったのかもしれない」
加州はもちろん、蜂須賀も詳細は知らない。鶴丸の元主が病死した本丸に彼女が引き継ぎとして訪れたこと、刀剣たちに受け入れられずに審神者を辞めていたということを聞いただけだ。どうして鶴丸がここにいるのかも、彼女が再び審神者になることを決めた理由も何も知らない。彼らも話す気がないようだから、きっとこれからも知ることはないのだろう。
「ま、おかげで俺たちは楽しく暮らせてるけどねー」
頭の後ろで手を組んだ加州が踵を返して歩きだす。蜂須賀も倣えば彼らの主は少し先で立ち止まり蜂須賀たちを待っていてくれた。足早に追い駆けると彼女の視線が「どうしたの?」と問いかけてくる。
「いや、何でもないんだ」
「主さん! 早く帰ろうぜ! 腹減った!」
「俺もー! なぁ大将、今日の飯は何にするんだ?」
「そうだなぁ。何が食べたい?」
「すぱげってぃ!」
誰よりも早く答えたのは鶴丸で、愛染と厚が嬉しそうに賛同の声を上げた。満面の笑みで「ちゃんと約束覚えてるぞ!」と言う鶴丸に彼女は肩を竦めることで了承の意を示す。何だかんだ言って彼女は鶴丸国永という刀剣男士に甘いのだ。彼女によって肉体を得た最初の夜、当たり前のように一緒に風呂に入る彼らに酷く驚いたものだ。恋仲なのかと尋ねたが「違う」と二つの声が返ってきて頭を抱えたのもこの時である。
「まぁ、いいか」
呟いて蜂須賀は考えることを止めた。加州も言った通り、自分たちも彼も彼女も楽しく暮らせているのならそれで良いのだ。
蜂須賀虎徹は初期刀である。顕現された時には既に鶴丸国永が主の隣にいた。それからも鶴丸国永はいつでも彼女の傍に在る。何時も彼女の傍で慈しむように彼女を見つめているのだ。彼の彼女への想いは聞くまでもなく、また、彼女が彼を見る目も自分たちに向けるものとは少々異なっていた。
それが人間でいうところの「恋」なのか「愛」なのか、蜂須賀には分からない。けれど、確かに彼らはそれぞれの「特別」なのだ。