ずっと会いたかった。
会って謝りたかった。
騙していたことを。
裏切っていたことを。
それを告白する勇気を持てなかったことを。
助けてやれなかったことを。
独りにさせてしまったことを。
”……馬鹿だね、マルコは”
その考えが、ただの甘えだと気付きもしないで。
「タミは変わらないね」
泣きそうな顔で笑ったリサの視線が、再び海へと向けられた。
困惑とほんの少しの恐怖を抱くタミが俺とリサとを交互に見て泣きそうに歪む。
タミも気付いたのだろうか。
それとも、まだ気付かせてもらえないのだろうか。
俺たちには、償いのチャンスすら与えられないのだということに。
「――リサ」
意を決して呼びかければ、緩慢な動きでリサが振り返る。
絡んだ視線は甘く、どこか切ない。
リサがまだ俺を想ってくれていることは一目瞭然で、けど、だからこそ気付いてしまう。
「ん?」
小首を傾げて微笑むリサが、俺を拒絶していることに。
その笑顔も、声も、仕草も、何もかもが。
それ以上近づくなと告げている。
それ以上近付いてこないでと懇願している。
それほどまでに追い詰めたのは紛れもなく、俺とタミで。
謝罪することすら、ただの甘えでしかない。
赦しを乞うことすら、俺たちのエゴでしかない。
甘く考えていた。俺も、タミも。
俺たちが思う以上にリサは傷付いていた。苦しんでいた。
この五年間、どうすればリサに償えるのかを考えていた。どうすれば赦してもらえるのか考えていた。
俺たちは、リサのことなどこれっぽっちも想っていなかった。自分たちのことばかり考えて、勝手に落ち込んで、泣いて、苦しんで。
そんな俺たちを見て、リサは何を思っただろう。
もっと早くに気付くべきだった。気付かなければならなかった。
「どうしたいの?」
どうして欲しいの?
何も言えないでいる俺に、リサは昨夜と同じ問いを重ねる。
それはまるで、俺たちが望むリサを演じてくれると言っているようなものではないか。
それはまるで、俺たちに本心を見せないと言っているようなものではないか。
違う、その通りだ。
リサは未だに本心を見せてはくれない。本心を見せるほどの位置に俺たちはいない。
リサの中に、俺たちはいない。存在していない。『家族』という共通点を持った他人で、『仲間』という言葉で繋がった他人。ただそれだけだ。
その事実に眩暈がして、足元から崩れ落ちそうになる。
平衡感覚がおかしくなってしまったのだろうか、まるで自分がフラフラと揺れているようにすら思える。
何を言えば良いのだろうか。
どの言葉が正解なのだろうか。
そう考えて、我に返った。
正しい答えなど、俺たちが持っているはずがない。
「………何も」
何もいらない。
何もしなくていい。
俯いたまま答えた俺の耳には、ただ波の音ばかりが届く。
「何もいらねぇ。お前が俺たちに施す必要なんてこれっぽっちもねぇ」
「施しだなんて思ってないよ」
あぁ、そうだろうな。呟いて自嘲の笑みを浮かべた。
家族として戻ってくることを決めた時、リサが何を想ったのか。今なら理解出来る。
お前は、ただ孤独に耐えられなくなっただけなんだろう?
独りでいることを恐れて、自分の為にこの船に戻ってきたかっただけなんだろう?
だからこそ、俺たちにこんな態度を取ってるんだろう?
本当なら、何発殴っても殴り足りないはずなのに。
殴って、罵倒して、殺したいほどに憎んでいるはずなのに。
後ろめたさからそれが出来ずにいる。
俺の懺悔に耳を貸して、キスまで受け入れて。
「どうしたい」
お前は。リサは。
「どうして欲しい」
俺に。俺たちに。
見つめた先にいるリサは無理に笑おうとして、
「ころして」
涙でぐしゃぐしゃになった顔でそう呟いた。