日の出と然程変わらない時間に目を覚ます。この船に乗ってから朝に強くなったのは喜ばしい事だった。
緩慢な動作で寝巻き――といっても、ただのタンクトップと短パンだけれど――から着替え身支度を済まし部屋を出て食堂に向かう。朝はそんなに食べれる方ではないから適当にジャムを塗ったパンとサラダを食べて甲板へと足を運んだ。
甲板にやって来ると、船首の方に集まった船員達が何処か浮き足立った様子で騒いでいる。何だろうかとそちらに足を向けようとした時、誰かが背後にやって来たのが分かった。船室から甲板へと続く扉の所に立っている私が道を塞いでいるのだ。謝罪の言葉を口にしながら振り向いた私は、一瞬で声を失った。
そこに立っていたのは、昨夜私が失恋した相手。
「おはようございます」
笑顔を貼り付けて挨拶をすれば、いつもと変わらない笑顔で挨拶を返してくれるマルコ隊長。きっと、私が動揺した事も分かってるだろう。それでも何も言わずにいつも通りに接してくれる。その事にホッとしたけれど、何処かで傷付いている自分がいる事も分かってる。
「すみません、道塞いでましたね」
「何してんだい?」
「甲板に来てみたら、あそこで何か騒いでるみたいで……」
未だ船首で騒ぎ続ける船員達を見ながら答えると、隊長は納得したのか一つ頷いた。
「もうすぐ島に着くんだよい」
「あ、そうなんですか?」
「あぁ。今、操舵室に行って来たんだが、午後には着くらしい」
「へぇ……2週間ぶりですもんね、皆が浮き足立ってるのも分かる気がします。楽しみですね!」
「けど、アイツ等ははしゃぎ過ぎだよい。島で騒ぎ起こさねぇように躾けておかねぇとなぁ」
ニヤリと悪どい笑みを浮かべる隊長に「お手柔らかにお願いしますね」と言い残して部屋へ戻ろうとしたら、隊長に呼び止められた。
「アッチに用があったんじゃねぇのかい?」
甲板を親指で指しながら首を傾げる隊長に、苦笑しながら首を振った。
「別に用は無かったんです。風に当たろうかとも思ったんですが、ここは逃げる事にします」
最後だけ悪戯めいた笑みを浮かべると、隊長も声を上げて笑い、軽く肩を回した。
「そりゃ残念だ」
「イイ子に出来ますから。島に降りる元気が残るようにしてあげてくださいね」
「そいつァ保障出来ねぇな」
本当、イイ性格をしていると思う。海賊っぽい顔っていうのはああいう顔を言うんだろうなぁ、なんて考えながら部屋へ戻って行った。大丈夫、普通に話せる。大丈夫。
「大丈夫」
声に出して自分に言い聞かせながら部屋に入る。扉が閉まると同時に、冷たい何かが頬を伝った気がした。
大丈夫――なんかじゃ、ない。
堪えきれない嗚咽が漏れる。シンとした部屋の中でそれは嫌に大きく聞こえ、慌てて両手で口を覆った。誰にも聞かれたくない。
すき。
すきです。
想いは常に最大値
たとえ、決して叶わないのだと知った後でも。