01


明かりを消し去った部屋の中、リサはベッドの上で膝を抱えていた。

「ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな――!!」

苛々する。
悔しい。
畜生。
何で。
どうして。

次から次へと沸き起こるのは怒りの感情ばかり。
思い付く限りの悪態を吐き捨て続けているが、どうやらこの怒りは収まりそうにない。

コンコン。ノックの音が飛び込んだ。

「リサ、入るぞい」
「煩い!! あっち行け!!」

怒りのままに叫んでも、扉の向こうに立つ男には通用しない。
扉を開けたマルコは灯り一つない暗い室内に眉を顰め、ベッドの上に座るリサのもとへと歩み寄った。

「リサ」
「煩い! 出てけよ!!」
「もう気が済んだだろうが」
「煩い!! 出てけって行ってんだろ!!」

宥めようとするその態度も、諭すような口調も、何もかもが腹立たしい。

出て行け!
出て行けよ!!

マルコが口を開くたびにがなり声を上げた。咽せたって構わない。
視界から消えて欲しかった。自分のテリトリーから消えて欲しかった。

「リサ」

語気を強めたマルコもまた、苛ついているのだろう。
毎回こんな様子ではまともに話をすることすら出来ないのだから。

「なぁ、リサ。アイツらも反省してるんだよい」
「反省?」

ハッ、と笑い飛ばすリサに、けれどマルコは根気よく説得を試みた。
結果など分かりきっているというのに、だ。

「反省もクソもないでしょ、アイツらは私が嫌いで、消えれば良いと思ってる」
「んなこたァ思ってねぇ。リサ、ちゃんとアイツらと話を――」
「どうせ私が悪いって言うんでしょう!!? そんな奴らとどうやって話せって言うんだ!!」
「リサ!」
「出てってよ!! 出てけ! 消えろ!!!」


――お前らなんか、顔も見たくない!!


静まり返った部屋に、リサの荒い呼吸の音だけが広がる。
何度も咽せた所為で口から漏れ出る喘鳴にすら怒りがこみ上げてくる。
消えろ。消えてくれ。頼むから、消えてくれ。
痛む喉を押さえつけながら固く目を閉じたリサを無言のまま見下ろしたマルコは、やがて踵を返して部屋を出て行った。

「、は、はは……」

頼むから、もう来ないでくれよ。
消えてくれ。
私の世界から、消えてくれ。


どうせ、『そっち』の世界には私は存在しないんでしょう?


ぽたり。シーツに染み込んだのは、ただの汗か唾液だ。
涙なんかじゃない。涙であるはずがない。絶対に。